研究課題/領域番号 |
15K06792
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
長尾 元史 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究室長 (00359671)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アストロサイト / 神経幹細胞 / グリア / 転写因子 / 大脳新皮質 |
研究実績の概要 |
哺乳類の中枢神経系において、アストロサイトは最も数の多い細胞であり、中枢神経系の様々な機能において重要な役割を果たす。アストロサイトは、発生後期に神経系前駆細胞から生み出される。近年の研究により、STATあるいはBMPシグナル経路がアストロサイト分化を促進することはよく知られているが、アストロサイトの特異化を制御する分子メカニズムについては未だ不明な点も多い。本研究では、大脳新皮質の発生において、転写因子Zbtb20がアストロサイトの特異化を制御することを明らかにした。Zbtb20は、主にグリアを生み出す発生後期の神経系前駆細胞とアストロサイト系譜細胞で高く発現していた。培養したマウス神経系前駆細胞でZbtb20を過剰発現させたところ、アストロサイト産生は促進され、ニューロン産生は抑制された。逆に、ノックダウンすると、アストロサイト産生の抑制とニューロン産生の促進が観察された。さらに、マウス個体内の神経系前駆細胞でZbtb20を過剰発現またはノックダウンしても、同様の結果が得られた。グリアの特異化因子として転写因子Sox9とNFIAが知られている。Zbtb20によるアストロサイト産生の促進は、Sox9あるいはNFIAのノックダウンにより抑制された。この結果は、Zbtb20によるアストロサイト産生の制御に、Sox9とNFIAが必要であることを示している。さらに、Zbtb20はSox9ではなくNFIAと結合することも見出した。以上より、Zbtb20はSox9とNFIAの2つの因子と協調して働き、アストロサイト産生を促進する新規の特異化因子であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アストロサイトの特異化を制御する分子メカニズムは不明な点が多い。本年度の研究により、Zbtb20はSox9、NFIAと協調して働き、アストロサイトの特異化を制御する新規の転写因子であることを明らかにすることができた。この成果をまとめ論文発表をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で、大脳新皮質の発生過程において、Zbtb20はアストロサイト産生を制御していることが明らかになった。どのようにアストロサイト産生を制御するのか、さらに詳細な分子メカニズムを解析する予定である。また、Zbtb20は、成体の脳、脊髄に存在する成熟したアストロサイトにも発現している。このことは、Zbtb20が分化後のアストロサイトの機能にも関与することを示唆しており、今後は、その点について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた実験の順番を入れ替えたため。今年度は、すでに当研究室にある消耗品、試薬等を使って行う研究が多かったため、予定より、必要な物品費が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、行う予定であった実験に必要な物品を購入する。 新たな実験系の立ち上げが必要なため、購入する消耗品等が増える予定である。
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