研究課題
本研究では毒性タウ分子種の同定を目的として、加齢依存的にタウ病態を発症し脳萎縮が進行するタウオパチーマウスモデルを用いてポジトロン断層画像(PET)、核磁気共鳴イメージング(MRI)、二光子顕微鏡蛍光イメージングなどによる生体マルチモーダルイメージング研究を進めて来た。これまでタウPETイメージング、神経炎症PETイメージング、形態MRI法を用いてマウス脳の経時的変化を追跡することにより、タウ病変の進行に伴う神経炎症の上昇と、タウPETシグナルの上昇がある月齢を境に頭打ちになる現象を確認した。死後脳標本を用いた病理像とタウPETシグナルの相関を調べた結果、PETシグナルとタウ病理の有意な正の相関が認められた。一方で、細胞レベルのタウ病態の変化を生体で評価するため、二光子顕微鏡による経時的観察を行った。その結果、タウ陽性神経細胞の産生と消失が起こる事で、全体量としてのタウ陽性細胞は6ヶ月齢まで上昇したのち、横ばい状態になることが確認された。興味深いことに、タウの発現を抑制することで産生と消失の割合が減少することが明らかとなった。これらの事実は生体イメージング技術にて初めて明らかになったことであり、タウ陽性神経細胞の産生と消失の割合の変化はマウスモデルを用いた治療評価系の指標となりうる。我々が用いたタウオパチーマウスモデルでは、ミクログリアの活性化をTSPOタンパクの上昇、あるいはP2Y12受容体の減少で評価できることを見出しており、神経炎症を標的とした薬剤の開発に資する評価系が確立したと考えられる。今後、タウ病態、神経変性、神経炎症がどのように関わって、脳機能障害を引き起こすかについて継続して研究を進めていきたい。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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