研究課題/領域番号 |
15K06796
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山田 俊幸 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (20183981)
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研究分担者 |
土田 成紀 弘前大学, 医学研究科, 教授 (20142862) [辞退]
七島 直樹 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (80333730)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 胸腺DP細胞 / レチノイン酸受容体 / Egr1 / Cryab / Dec1 / NF-kB / Gata3 |
研究実績の概要 |
本年度は、HHR胸腺のDP細胞でのレチノイン酸の作用低下が、どのような経路を経てヘルパーT細胞分化のマスター因子であるGata3の発現低下に結びつくか、すなわちレチノイン酸受容体(Rara)からGata3遺伝子の発現までの道筋、に焦点を当てて解析を行った。 SDRの胸腺DP細胞とHHRの胸腺DP細胞との間のマイクロアレイ解析の結果の一覧から、レチノイン酸受容体(Rara)の直接の支配下にある遺伝子をピックアップしその発現の増減を検討した。その結果、HHRのDP細胞ではEgr1、Cryab遺伝子の発現が低下している一方、Dec1遺伝子の発現は上昇していた。 これらの遺伝子のうち、Egr1は下流に位置するAP1やNF-kBの遺伝子発現を正に調節する。また、Cryabタンパク質はNF-kBと結合してそれを活性化することに加えて、IKKβの活性化を通じてIKBαの分解とNF-kBの活性化をもたらすことが知られている。NF-kBはGata3遺伝子の発現を正に調節するので、これらのことを総合すると、SDR(正常動物)のDP細胞には、RaraからEgr1やCryabを経由してNF-kBの活性化が起こり、それがGata3遺伝子を発現誘導するという経路が存在すると考えられ、HHRのDP細胞ではレチノイン酸の作用低下によりこの経路に異常を来たしているものと推察された。 一方、Dec1はSmad3をリン酸化し、リン酸化されたSmad3はGata3に結合してそれを活性化するという報告がある。HHRのDP細胞でのDec1遺伝子の発現上昇は、推定されるGata3機能の低下と相容れないが、これについてはさらなる解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、レチノイン酸受容体からGata3遺伝子の発現までの経路が明らかになったため。これにより「何をどこまで明らかにしようとするのか」の一番目の目的は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究で、ヘルパーT細胞分化に伴うGata3遺伝子の発現調節に関与するプロモーター領域とそのクロマチン構造の変化が明らかにされた。そこで今後は本年度の研究により明らかになった経路が、同領域のクロマチン構造の決定に関わるか否かを探るべく解析を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)申請者が新年度から日本薬科大学に異動することになり、当該年度の後半はその準備のため予定していた実験が行えず消耗品を購入できなかったため。 (2)白内障学会誌から寄稿の依頼があり、新年度に請求される投稿料を捻出するために支出を抑えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)平成28年度に購入する予定だった消耗品を購入する。 (2)白内障学会誌への投稿料に充てる。
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