GDF5遺伝子はヒトとマウスの両方で変形性関節症 (OA)の発症に関連することが報告されている唯一の遺伝子である。私たちが樹立したM856マウスはGDF5遺伝子にミスセンス変異 (W408R変異)を持ち、W408Rホモ接合体の肘関節では、早発性にOA様の病態が発現することを報告したが、OAモデル動物としての評価は詳細に行っていなかった。本研究の目的は、 1) C57BL/6の遺伝的背景にW408R変異を導入したコンジェニックマウス系統 (B6-W408R)を作製し、詳細な組織学的解析によってOAモデル動物として有用性を判断すること、2) マイクロアレイ解析等を駆使して、関節軟骨におけるGDF5の標的因子を同定すること、3) OAを自然発症するSTR/ortマウスにW408R 変異をヘテロ接合で持つコンジェニックマウス (STR/ort-W408R系統)を作製し、OA病態の再現性に優れた新規OAモデル動物を樹立することである。 H29年度の実績は下記の通りである。1) B6-W408R系統については、10週齢の肘関節におけるOA病態の有無を詳細に調べた。その結果、W408Rホモ接合体では10個体すべてで関節軟骨破壊、滑膜細胞増生が観察され、B6-W408RのOAモデルとしての有用性が示された。3) STR/ort-W408R系統についてはコンジェニック化が完了し、OA病態の解析を開始した。まだ予備的な段階であるが、STR/ort-W408Rに観察されるOA病態はSTR/ortよりも重度であり、STR/ort-W408R系統は新規OAモデル動物として有用であると考えられた。1)3)の研究目的については順調に進行したが、2)については明確な結果を得ることができなかった。 今後はB6-W408R、STR/ort-W408R系統ともに10週齢、6か月年齢時におけるOA病態を明らかにし、論文として発表する予定である。OAモデル動物としての有用性が高ければ、新規OAモデル動物としての特許取得を目指す。
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