研究課題/領域番号 |
15K06802
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢一 広島大学, 理学研究科, 特任准教授 (90363043)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 両生類 / 再生 / 変態 / トランスジェニック / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
ネッタイツメガエル及びイベリアトゲイモリのゲノム編集効率を向上させるため、リコンビナントCas9タンパク質とsgRNAをリボヌクレチドタンパク質(RNP)複合体(以下Cas9/sgRNA RNP)として導入する条件について検討した。Burgerら(2016)が実験に用いたBuffer組成に基づいてCas9/sgRNA RNPをネッタイツメガエル受精卵に導入すると、孵化前後に奇形が生じ、正常発生率の低下が確認された。そこでBuffer組成を変えて導入したところ、正常発生率は高いままに、シビアなノックアウト表現型が高効率で得られた。この条件下で、ヒト遺伝性色素合成疾患遺伝子4種類及び眼疾患遺伝子を標的とするsgRNAを作製し顕微注入した結果、生存胚のほぼ全ての胚でシビアな表現型(メラニン色素が全く見られないアルビノ胚)が得られた。次世代シークエンサーを用いてアンプリコン解析を行ったところ、驚くべきことに、全ての胚において変異導入効率が98%を超え、中には野生型アリルが検出できない、つまり、100%に限りなく近い変異を持った個体が複数確認された。この確立したプロトコールは、Cas9mRNAを用いた従来のプロトコールと比較しても、非常に高効率である。次に、申請者が開発したマイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)を利用したノックイン法を用いて、ノックインに最適なCas9/sgRNA RNP導入条件を設定した。loxP配列を含むヒト疾患遺伝子cDNAをノックインしたネッタイツメガエルの作製を試み、現在、性成熟したF0個体が得られている。今後は生殖細胞系伝達したF1を作出する予定である。イベリアトゲイモリに関しても、CRISPRを用いたゲノム編集の実験系を確立した。安定して外来遺伝子をノックインする領域も同定し終わり、新しい外来遺伝子発現システム用のベクターもすでに作製している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要に記述したように、ネッタイツメガエル及びイベリアトゲイモリにおけるCRISPRベースのゲノム編集技術の確立に成功した。特に、ファウンダー解析に耐えうるノックアウトの効率化は、予想外の大きな成果である。この成果は、両生類を用いた迅速な遺伝子機能解析のスタンダードとなることが期待できる。また、loxPを導入したF0ネッタイツメガエル個体が性成熟したことにより、Creを用いた個体機能解析のテストケースになり得るであろう。イベリアトゲイモリに関しても、一年でゲノム編集個体(ファウンダー)を性成熟させることができたため、今後の研究計画の迅速な遂行が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年度であり、loxP導入子孫の選別及びCreによる外来配列の除去について検討したい。また、新しい外来遺伝子発現システムについてはすべて準備が整っているため、ネッタイツメガエル及びイベリアトゲイモリの両種で導入していく。
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