• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

神経系におけるNMD依存的RNA分解機構の生理的意義

研究課題

研究課題/領域番号 15K06804
研究機関国立研究開発法人国立長寿医療研究センター

研究代表者

徳永 暁憲  国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学, 室長 (70549451)

研究分担者 濱田 文彦  大分大学, 医学部, 教授 (70252707)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード神経発生 / 神経幹細胞 / NMD / RNAスプライシング
研究実績の概要

選択的スプライシングにより特定のRNA分解が誘導されるNMD機構 (Nonsense-mediated mRNA decay)は、分化過程での多様性の獲得および成体の恒常性維持に働く重要なシステムとして注目されている。脳神経系では多くの遺伝子がスプライシング制御を受けることが知られる一方で、スプライシング制御の破綻が発生異常および神経疾患の発症にどのように関わるのかその分子基盤は殆ど解明されていない。NMDの主要構成因子UPF1の生理的役割を解明するため、UPF1-floxマウスを作成した。特にUPF1-floxマウスと中枢神経特異的Creマウス(Nestin-Cre)を交配して作成した神経特異的UPF1欠損マウス(Nestin-Cre:UPF1-flox)を用いてNMD依存的RNA分解機構の神経発生に及ぼす影響を解析した結果、NMDは神経幹細胞の維持および正常な神経分化に重要な役割を持つことが明らかとなった。
またUPF1がリン酸化を受け翻訳抑制を制御することが示されており、現在UPF1のリン酸化にも関わるインスリンシグナル(PI3K-AKTシグナル)の解析を併せて行っている。全身性UPF1欠損マウスは胎生期、神経特異的UPF1欠損マウスも出生後に致死となったため、成体で脳インスリンシグナル異常を示すアルツハイマー病モデルマウス、糖尿病モデルマウスを用いて解析を進めている。脳インスリンシグナルの異常は認知症を始め様々な精神疾患の発症に深く関わることからその下流で制御を受けているNMD機構との関連性について検討を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現所属の国立長寿医療研究センターにおいて脳疾患に関わるテーマに重点を置き研究を展開している。脳内のPI3K-AKT経路に異常を来たすアルツハイマー病モデルマウス、糖尿病モデルマウスを用いて脳インスリンシグナル及び認知機能の変化、スプライシング制御の変容等に着目した解析を進めている。

今後の研究の推進方策

今後Nestin:UPF1 cKOマウスを用いた神経分化過程での解析に加えて、成体での脳恒常性維持および神経疾患発症におけるNMDの役割を解析する。現在解析を進めているアルツハイマー病モデルマウス(変異型APPノックインマウス)や糖尿病モデルマウスにおいて脳内のPI3K-AKT経路の亢進、更にその下流で働くmTORシグナルの亢進などが観察されている。これらの疾患モデルマウスでUPF1のリン酸化状態や神経系に発現するスプライシング調節因子の発現変化にどの様な影響が見られるか解析を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

現所属の国立長寿医療研究センターへの異動に伴い、研究計画に変更点が生じた。
当初計画していた消耗品費のマウス維持経費に差額が生じたため研究経費の一部を次年度へ持ち越した。

次年度使用額の使用計画

消耗品費として免疫組織試薬、遺伝子導入実験試薬、マウス維持経費等に用いる。
また得られた成果を論文発表、学会発表にて発信する際に必要となる諸経費、旅費に使用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Role of metabolic signaling in the regulation of cognitive functions.2016

    • 著者名/発表者名
      Tada H, Tokunaga A, Tanokashira D, Kurata E, Taguchi A.
    • 雑誌名

      Biomedical Gerontology

      巻: 40(2) ページ: 9-14

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Genomic Loss of DUSP4 Contributes to the Progression of Intraepithelial Neoplasm of Pancreas to Invasive Carcinoma.2016

    • 著者名/発表者名
      Hijiya N, Tsukamoto Y, Nakada C, Tung Nguyen L, Kai T, Matsuura K, Shibata K, Inomata M, Uchida T, Tokunaga A, Amada K, Shirao K, Yamada Y, Mori H, Takeuchi I, Seto M, Aoki M, Takekawa M, Moriyama M.
    • 雑誌名

      Cancer Res.

      巻: 76(9) ページ: 2612-2625

    • DOI

      10.1158/0008-5472.CAN-15-1846

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Kidney-specific knockout of Sav1 in the mouse promotes hyperproliferation of renal tubular epithelium through suppression of the Hippo pathway.2016

    • 著者名/発表者名
      Kai T, Tsukamoto Y, Hijiya N, Tokunaga A, Nakada C, Uchida T, Daa T, Iha H, Takahashi M, Nomura T, Sato F, Mimata H, Ikawa M, Seto M, Matsuura K, Moriyama M.
    • 雑誌名

      J Pathol.

      巻: 239(1) ページ: 97-108

    • DOI

      10.1002/path.4706

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 糖代謝シグナル異常を介したシナプスを起点とする認知機能障害機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      多田敬典、徳永暁憲、田之頭大輔、柏田舞波、佐治多美子、田口明子
    • 学会等名
      第94回日本生理学会大会
    • 発表場所
      浜松
    • 年月日
      2017-03-28 – 2017-03-30
  • [学会発表] 糖尿病随伴認知機能障害の発症過程における海馬インスリン様シグナルの変容2017

    • 著者名/発表者名
      徳永暁憲、多田敬典、田之頭大輔、佐治多美子、柏田舞波、田口明子
    • 学会等名
      第31回日本糖尿病・肥満動物学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2017-02-10 – 2017-02-11
  • [学会発表] 糖尿病に伴う認知機能障害における前頭葉・海馬神経ネットワーク制御機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      多田敬典、徳永暁憲、田之頭大輔、柏田舞波、佐治多美子、田口明子
    • 学会等名
      第31回日本糖尿病・肥満動物学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2017-02-10 – 2017-02-11
  • [学会発表] アルツハイマー病発症における海馬IRS2シグナルの関与2017

    • 著者名/発表者名
      田之頭大輔、徳永暁憲、多田敬典、柏田舞波、佐治多美子、田口明子
    • 学会等名
      第31回日本糖尿病・肥満動物学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2017-02-10 – 2017-02-11
  • [学会発表] 糖尿病に伴う認知機能低下と海馬IRS2シグナルとの関連2016

    • 著者名/発表者名
      田之頭大輔、福岡屋航、川邉健士朗、徳永暁憲、多田敬典、柏田舞波、佐治多美子、倉田栄子、田口明子
    • 学会等名
      第35回日本認知症学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-03
  • [学会発表] アルツハイマー病発症における海馬インスリン様シグナルの関与2016

    • 著者名/発表者名
      田之頭大輔、福岡屋航、川邉健士朗、徳永暁憲、多田敬典、柏田舞波、佐治多美子、倉田栄子、田口明子
    • 学会等名
      第31回日本糖尿病合併症学会
    • 発表場所
      仙台
    • 年月日
      2016-10-07 – 2016-10-08

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi