研究課題/領域番号 |
15K06811
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
大倉 定之 日本医科大学, 医学部, 助教 (10731036)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ヒト化マウス / ウイルス感染 / 自然免疫 / 造血系幹細胞 / 間葉系・間質系幹細胞 |
研究実績の概要 |
平成27年度に計画したマウスにおけるヒト免疫の系統的再構築について技術を確立した。具体的には (1) ヒト臍帯血からCD133陽性造血幹細胞を単離し、6種類のサイトカイン存在下で単培養することにより、免疫細胞への分化能を損なうことなくex vivoでの増殖(およそ200倍)が可能になった。これにより、同一臍帯血に由来する造血幹細胞を移植できるマウス数が増加した。 (2) 間質・間葉系幹細胞については、市販品は同幹細胞の純度が低かったため、臍帯血または臍帯からの分離に変更した。臍帯血からの分離は効率が低く、数種類の方法を検討した結果、より誘導効率および純度が高い臍帯ワルトン膠質から単離する方法を確立した。更に間質系幹細胞のsphere培養を行うことにより、生体内に近い状態を再現する方法を確立した。 (3) 本研究計画にはなかったが、造血幹細胞を間質系幹細胞シート上で共培養することにより、上記(1)のサイトカイン存在下で単培養する方法よりも、より幹細胞の性質を維持した状態で造血幹細胞を増殖させることが可能となった。 (4) 新生仔マウスへの幹細胞移植に関して、本研究申請時に計画した心臓内移植では移植後仔マウスの生存率が低く、生存したマウスでもヒト免疫細胞は確認されなかった。そこで侵襲性の低い顔面静脈内移植に変更した結果、移植後生存率が改善するとともに、ヒト由来のT細胞、B細胞が確認された。 (5) 分化に必要なヒトサイトカイン遺伝子の生体内発現に必要なvectorを構築し、ヒトサイトカインの産生を確認した。ただし特定サイトカインの不必要な過剰発現を回避するため、今後マウスへの移植には上記(3)で増殖した造血幹細胞とともに上記(2)のsphere培養した間質系幹細胞を同時移植する方法に変更する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績に概要」欄に記載の通り、 (1) 造血幹細胞のex vivoにおける増殖、 (2) 間葉系・間質系幹細胞の分離方法の変更、 (3) 新生仔マウスへの移植方法の変更 を余儀なくされたため、計画に多少の遅延が生じたものの、計画通り平成27年度内にNSGマウスのヒト化に成功した。 ただNSGマウスの繁殖に遅れが生じたことから、当初の計画よりも実験匹数が少なくなった。このため、本年度(平成28年度)は実験規模を拡大して計画通りウイルス感染を行い、本研究を遂行する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度にマウスのヒト化に必要な細胞、実験技術を確立できたことから、本年度(平成28年度)以降、実験匹数を拡大し、研究計画通りHIV-1 由来のデュアルレポーターvectorウイルスをヒト化マウスに感染させ、感染直後の粘膜組織における自然免疫を解析する。
ただしNSGマウスを使用した場合、骨髄球系自然免疫細胞の再構築効率はこれまでに報告されている通り、あまり高くはなかった。本年(平成28年)4月より米国Jackson Laboratory社からMISTRGマウス(NSGマウスと同様の方法で重度免疫不全にしたBalb/c系統マウスに、造血分化に必要なヒトサイトカイン遺伝子を導入したtransgenic mouse)が新たに販売開始されることになった。MISTRGマウスを使用することにより、従来のNSGマウスでは分化効率が低かった骨髄球系自然免疫細胞の分化が改善することが報告されている(Rongvaux et al., 2014, Nat Biotechnol)。このことから新たにMISTRGマウスを導入し、同様のヒト化構築実験を実施する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度末(3月)に、本学の共通機器としてBD Biosciences社より新しいFACS機器(FACSLSRFortessa X-20)が導入され、解析可能な色素数が大幅に増加した。平成28年度にはこの新しいFACS機器を使用し、ヒト化マウスにおける免疫細胞の多次元的な解析を実施する計画である。このFACS機器の導入は、本研究計画申請時には計画されていなかったものであり、これに伴い、平成28年度に新たな抗体を購入する必要が生じた。このため、平成27年度予算のうち76,604円分を平成28年度分に繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
新規購入したFACS機器には新しくUVレーザーとVioletレーザーが搭載されており、これらのレーザーによって励起される蛍光色素で標識した抗体を購入する予算に、前年度から繰り越した予算を充当する計画である。
|