本研究はHIV-1感染時に腸管・生殖器の粘膜で最初に感染が成立する細胞および感染直後に活性化・誘導される自然免疫担当細胞を明らかにすることを目的とした。 感染後のウイルス動態を明らかにするために、骨髄球系造血機能を増強したヒト化マウスを作製した。重度免疫不全マウスの新生仔マウスにヒト由来造血幹細胞とヒト臍帯由来間質系・間葉系幹細胞を同時移植した。間質系・間葉系幹細胞はimmunosuppressiveに作用したが、間質系・間葉系幹細胞の培養方法を変更することで、間質系・間葉系幹細胞のマウス骨髄内での生着が認められた。末梢血、脾臓内での骨髄球系細胞の再構築に加え、皮膚上皮組織内にヒト由来ランゲルハンス細胞の存在がFACS解析により確認され、骨髄球系細胞の再構築が認められた。この結果は間質系・間葉系幹細胞と造血幹細胞の同時移植に成功した最初のヒト化マウスであり、本研究の結果報告には間に合わなかったが、論文を投稿中である。今後このヒト化マウスを用いた多分野の研究が期待される。 上記で確立したヒト化マウスにデュアルレポーターHIV-1ベクターウイルス(ルシフェラーゼとGFPを同時に発現)を感染させた。ウイルス粒子へのルシフェラーゼ取り込み効率が低く、生体イメージングでは発光を検出できなかった。ウイルスを接種して3時間後及び6時間後に生殖器、消化管組織を摘出し、蛍光免疫染色によりウイルス粒子由来のGFP蛍光を検出した。HIV-1粒子は接種3時間後には粘膜組織表面に広く浸潤し、6時間後にはウイルス粒子を取り込んだ、または侵入した細胞が観察された。現在これらの細胞種の同定を行っている。今後、骨髄球分化に必要なヒト由来サイトカイン遺伝子を遺伝子導入した間質系・間葉系幹細胞を用いてより高度に骨髄球系細胞が再構築したヒト化マウスを作製することで、ウイルス接種直後の自然免疫応答を解明する。
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