研究課題
我々は、日本産野生マウス由来近交系MSM/Ms系統を用いた多段階皮膚発がんマウスモデルと順遺伝学的連鎖解析により、皮膚がん抵抗性/感受性遺伝子座Skin tumor modifier of MSM (Stmm)をマップしてきた。中でもマウス7番染色体上のStmm1は、早期良性腫瘍に対する抵抗性遺伝子座である。本申請課題では、Stmm1の候補遺伝子として副甲状腺ホルモン(PTH)およびに着目した。PTHは副甲状腺から分泌されるペプチドホルモンであり、生体内カルシウムの恒常性に重要な因子である。血清中のインタクトPTH(iPTH)をがん抵抗性系統MSMと感受性系統FVB間で比較した結果、iPTH量がMSM系統において高いことが明らかとなった。そこで、MSM-BAC クローンをFVB に導入した高iPTH発現型のPthMSM-Tgマウスを作製した。このTgマウスの血清中iPTH量のみが野生型マウスの約2倍量に増加していた。一方、Pthヘテロノックアウトマウス(Pth+/-)ではCa量は変化せず、iPTH量が約1/2量に低下していた。そこで、これらのiPTH量が異なるBAC-TgおよびPth+/-マウスを用いて、それぞれDMBA-TPA多段階皮膚発がん実験を行った結果、Tgマウスは有意に良性腫瘍数が減少し、Pth+/-マウスでは有意な増加が認められた。さらに、MSMとFVB間にプロセシングに重要な領域にcSNP(Val28Met)が存在した。このcSNPの効果を培養細胞およびTgマウスを用いて解析した結果、PthMSMアレルはPthFVBアレルに比べ細胞外分泌量を上昇させ、表皮細胞の増殖抑制、細胞内カルシウムの上昇、またそれに伴う細胞分化を促進することが観察された。これらの結果から、PthはStmm1の原因遺伝子の一つであり、皮膚腫瘍制御因子であると示唆された。
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