Epstein-Barrウイルス(EBV)はバーキットリンパ腫、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)など様々な腫瘍性疾患に関与する。EBVには特効薬はなく、CAEBVの治療は造血幹細胞を移植する以外に有効な手立てがない。本研究は臨床応用を想定し、EBVエピゾーマルベクターを利用したウイルスゲノム切断および単純ヘルペスウイルス(HSV)TK遺伝子による新規治療法の開発を目指し、マウス内でEBV関連疾患の治療を試みる。 EBV感染細胞B細胞株RajiにTK、細胞表面マーカーCD4、蛍光タンパク質および薬剤耐性因子(puromycin)を同時に発現するベクターを導入し、翌日、蛍光タンパク質及びTKの発現を確認した。TK導入細胞としてCD4発現細胞をマグネットビーズで分画し、毎日ガンシクロビル(GCV)あるいは溶媒DMSO添加の有無により、細胞死誘導を行った。遺伝子導入4日後にGCVを添加したものはRajiの集合体形成の抑制、蛍光タンパク質の発現減少や細胞の増殖抑制効果があった。 EBV疾患モデルマウス内で治療効果の検証を行う為、薬剤選択によりTK発現細胞を増殖させた。マウスに細胞を移植1週間後から、GCVあるいはPBSを毎日静注した。細胞を移植した全てのマウスが2~3週間で衰弱した。GCVによるマウスへの毒性は見られなかった。解剖後、多臓器にEBV DNAが検出された。脾臓、肝臓および末梢血中のヒトB細胞中のCD4発現量に差が見られ、TK発現の低下した細胞はGCVが効かない可能性が考えられた。 今回,培養細胞でTK-GCV療法は十分効果が得られたが、マウスでは効果が得られなかった。しかし、TK発現の低下という理由が考えられる為、TK発現の安定化により感染細胞特異的な新規治療法につながると期待される。
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