マイクロアレイデータをもとに生物学的な機能の解釈やパスウェイ解析が可能なソフトウェアIngenuity Pathways Analysis(IPA)を用いた詳細な解析を行った結果、異なる組織型の卵巣癌細胞で共通して特異的に発現が増加したmiRNA30個、発現が減少したmiRNA68個を抽出し、最終的に卵巣癌で発現が特異的に増加したmiR574-3P、miR1260、miR24を候補miRNAとして絞り込んだ。またデータベース(Target scan) を用い、miR574-3PのターゲットmRNAとしてGALNT6やLATが予測された。加えて、候補遺伝子として検出されたmiR-574-3PについてリアルタイムPCRによるmiRNAの定量を行うために高感度DropletDigital PCR (ddPCR)による解析を行った。まずmir574-3Pおよび内因性コントロールであるU6を用いてddPCRの反応条件、アニーリング温度の検討を行った。しかしながらいずれも発現量が微量なため十分に検出されず条件検討が行えなかった。また通常のリアルタイムPCRでは十分な解析ができなかったためリアルタイムPCRサンプルを鋳型として再度リアルタイムPCRを行ったところ、以下の結果が得られた。コントロールであるヒト卵巣表面上皮細胞(HOSE)細胞との発現比は漿液性嚢胞腺癌(HRA) 1.6、類内膜腺癌(TOV112D) 1.6、粘液性嚢胞腺癌(MCAS) 6.3、明細胞腺癌(HAC-2) 1.2、明細胞腺癌(OVAS) 1.6 といずれも増加が認められマイクロアレイの結果が裏付けられた。しかしながら微量の遺伝子を無理に増幅させたためバラつきや再現性が乏しくデータとして信頼性に欠けることが危惧された。以上の結果からエクソソームの濃縮などサンプルの回収条件を見直す必要が考えられた。
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