研究課題
本研究はがんの遠隔転移において細胞接着の亢進によるがん集団化が転移を促進するかを明らかにし、いつどこで集団化が起こる事が重要であるかを明らかにしようとするものである。研究の発案にあたり、発生生物学を背景に持つ研究代表者の主な研究材料である神経堤細胞とがん細胞の類似性に注目し、神経堤細胞と同様の発現パターンの変化を持つがん細胞として骨肉腫高転移株を2種選択していた。1つはN-cadherin++/OB-cadherin-株である143B, もう一つはN-cadherin-/OB-cadherin++株であるHuO9-M132株であった。これらの株の転移機序の違いを中心に研究を進めていく予定であったが、当時使用していたOB-cadherinの抗体に不備があり発現変化が顕著では無かった事、HuO9由来株が遺伝子導入などの編集に全く適さない株であった事などから実施計画を修正し、当該研究室で再度セレクションした143B株を元に転移の性質が異なる細胞株を複数作成することに成功した。当初の計画通り遠隔転移と細胞接着分子の発現変化を中心に株を検証したところ肝臓と腎臓に特異的に転移する株と頭部のリンパ節に高頻度で転移する株でN-cadherin他、複数のカドヘリンに変化が生じている事を発見した。この変化の機序を探るため親株である143Bと肝・腎高転移株143Bkid, リンパ転移株143Blymの間で遺伝子発現変化を網羅的に解析した。候補遺伝子の発現のValidationを行い、数種類の亢進遺伝子を発見した。そのうちの一つPEDFは一部ドメイン構造のペプチドが血管新生抑制機能を持つとされているが、全長の過剰発現で集団化が促進され、かつ肝臓・腎臓に転移する性質が上昇した。血管から出る性能には関与していないが転移巣での生着に関与している事が予想された。以上を論文にまとめ報告する。
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