• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

がん進展における代謝を介した足場非依存性増殖制御の役割

研究課題

研究課題/領域番号 15K06829
研究機関東京大学

研究代表者

坂本 毅治  東京大学, 医科学研究所, 助教 (70511418)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードがん
研究実績の概要

がんの足場非依存性増殖に関わる分子について、昨年度に引き続きがん細胞およびがん間質細胞でのがん悪性化に関する役割を個体レベルで解析を行った。がん間質に関する解析として、野生型およびノックアウトマウスにマウス肺癌LLC細胞、マウスメラノーマB16F10細胞の皮下移植を行った。その結果、LLC細胞、B16F10細胞の両者において、ノックアウトマウスでは野生型に比べ腫瘍の増殖が抑制されていた。組織学解析の結果、がん細胞の形態には大きな違いは見られなかったが、ノックアウトマウスでは血管新生が低下しており、これが腫瘍増殖低下の原因のひとつである可能性が示唆された。がん細胞について、前年度に引き続き乳がんモデルMMTV-PyMTマウスとノックアウトマウスとの交配を進め、MMTV-PyMT発現ノックアウトマウスの作製が完了した。まだ少数のマウスでの観察になるが、コントロールマウスに比べノックアウトマウスでは乳がん発生の時期に遅延が見られている。現在マウスの個体数を増やしつつ発症の経過を観察している。
一方、ノックアウトマウスの生理的表現型としてオスマウスの不妊が明らかとなった。さらなる解析により、標的分子はgerm cellに特異的に発現しており、germ cellを欠失しているW/Wvマウスでは標的分子の精巣内での発現が消失することをウエスタンブロッティングで確認した。また、生後6-10日の初期の精巣では標的分子の発現は低く、性成熟に伴い発現が増加することを確認した。ノックアウトマウスでは精巣重量の低下、精子数の減少、精子奇形率の増加が観察されたが精子生存率については異常が認められなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初、がんの足場非依存性増殖に関わる分子について、がん細胞およびがん間質細胞でのがん悪性化に関する役割を個体レベルで明らかにするべく研究を開始したが、標的分子がいわゆるがん精巣抗原であるだけでなく、精子形成に重要な役割を果たす分子という予想外の結果が得られてきた。がんでの表現型に比べ、精子形成の表現型の方が顕著であったため、精子形成能の解析の方に重点をおいて解析を進めた。がんの方ではがん間質、特に血管新生と標的分子との関与が示唆されるデータを今年度得ることが出来、また精子形成に関する機能解析についてひと通りのデータを今年度の研究で取得できたため、おおむね順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

限られた研究期間および研究費を有効に活用するため、標的分子の精子形成における機能解析に重点をおいて研究を展開する。これまでにin vivoの表現型については概ねデータを取得できているので、残りの期間でin vitroのメカニズム解析を行い論文にまとめる。具体的には野生型およびノックアウトマウス精巣でのトランスクリプトーム、プロテオーム解析を行い、ノックアウトマウスにおいて精子形成に関わるどのような分子経路に異常があるかを明らかにし、培養実験系での再現およびレスキュー実験を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

これまでに得られた内容を元に、論文投稿を行おうとしたが、学会等で研究内容について発表した際に、マウスを用いたより詳細なメカニズムの解析が必要であるとの専門家からの指摘を複数受けた。そのため、個体レベルでのさらなるメカニズムの解析を行いより良い雑誌に研究成果を投稿するため、当初予定していたin vitroの実験からより時間のかかるin vivoの実験に研究の重点を変更したため、次年度使用額が発生した。

  • 研究成果

    (26件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Novel adherent CD11b+ Gr-1+ tumor-infiltrating cells initiate an immunosuppressive tumor microenvironment.2018

    • 著者名/発表者名
      Tsubaki T, Kadonosono T, Sakurai S, Shiozawa T, Goto T, Sakai S, Kuchimaru T, Sakamoto T, Watanabe H, Kondoh G, Shinae Kizaka-Kondoh.
    • 雑誌名

      Oncotarget

      巻: 9 ページ: 11209-11226

    • DOI

      10.18632/oncotarget.24359.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deficiency of a membrane skeletal protein, 4.1G, results in myelin abnormalities in the peripheral nervous system.2017

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Y, Ohno N, Yamauchi J, Sakamoto T, Terada N.
    • 雑誌名

      Histochem Cell Biol

      巻: 148 ページ: 597-606

    • DOI

      10.1007/s00418-017-1600-6.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mint3 in bone marrow-derived cells promotes lung metastasis in breast cancer model mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Hara T, Murakami Y, Seiki M, Sakamoto T.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun

      巻: 490 ページ: 688-692

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2017.06.102.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Control of metastatic niche formation by targeting APBA3/Mint3 in inflammatory monocytes.2017

    • 著者名/発表者名
      Hara T, Nakaoka HJ, Hayashi T, Mimura K, Hoshino D, Inoue M, Nagamura F, Murakami Y, Seiki M, Sakamoto T.
    • 雑誌名

      Proc Natl Acad Sci U S A

      巻: 114 ページ: E4416-E4424

    • DOI

      10.1073/pnas.1703171114.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mint3-mediated L1CAM expression in fibroblasts promotes cancer cell proliferation via integrin α5β1 and tumour growth.2017

    • 著者名/発表者名
      Nakaoka HJ, Tanei Z, Hara T, Weng JS, Kanamori A, Hayashi T, Sato H, Orimo A, Otsuji K, Tada K, Morikawa T, Sasaki T, Fukayama M, Seiki M, Murakami Y, Sakamoto T.
    • 雑誌名

      Oncogenesis

      巻: 6 ページ: e334

    • DOI

      10.1038/oncsis.2017.27.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Integrated functions of membrane-type 1 matrix metalloproteinase in regulating cancer malignancy: beyond a proteinase.2017

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto T, Seiki M.
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 108 ページ: 1095-1100

    • DOI

      10.1111/cas.13231.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] がん細胞・間質細胞相互作用によるがん悪性化機構の解明2018

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治
    • 学会等名
      ROIS-DS-JOINT共同研究集会「若手カンファレンス:がん研究とデータサイエンスのコミュニケーション」
  • [学会発表] 腫瘍関連マクロファージにおけるMint3 の役割2018

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治,林哲郎,福井優也,村上善則
    • 学会等名
      平成29年度「先端モデル動物支援プラットフォーム成果発表会」
  • [学会発表] がん微小環境制御分子を標的としたがん治療の可能性2018

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治
    • 学会等名
      第1回がんと代謝研究会若手の会
  • [学会発表] インフルエンザウイルス感染におけるHIF-1活性化因子Mint3を介した自然免疫応答機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      植松崇之,藤田智子,中岡寛樹,原敏朗,小林憲忠,村上善則,清木元治,坂本毅治
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 炎症性モノサイトにおけるAPBA3/Mint3はがん転移性ニッチ形成を制御する2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治,原敏朗,中岡寛樹,林哲郎,村上善則,清木元治
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] Mint3は膵癌細胞の増殖を制御する2017

    • 著者名/発表者名
      柳津瞳,金森茜,坂本毅治,村上善則,清木元治
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 腫瘍関連マクロファージにおけるHIF活性化因子Mint3の機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      林哲郎,福井優也,坂本毅治,村上善則
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 天然変性蛋白質Mint3とFIH-1の相互作用機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      展天承,中山佳昭,長門石暁,坂本毅治,清木元治,津本浩平
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 腫瘍関連マクロファージにおけるMint3の役割2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治、林哲郎、福井優也、村上善則
    • 学会等名
      第15 回がんとハイポキシア研究会
  • [学会発表] 腫瘍関連マクロファージにおけるMint3の役割2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治、林哲郎、村上善則
    • 学会等名
      金沢大学がん進展制御研究共同利用・共同研究拠点シンポジウム・成果発表会
  • [学会発表] Mint3は膵癌細胞の細胞増殖を制御する2017

    • 著者名/発表者名
      金森茜,中岡寛樹,林哲郎,村上善則,坂本毅治
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 若手研究者から見たがん微小環境研究の展望2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 膜型プロテアーゼMT1-MMPの非プロテアーゼ活性によるがん微小環境制御機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治
    • 学会等名
      第76回日本癌学会学術総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 腫瘍関連マクロファージにおけるHIF活性化因子Mint3の機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      林哲郎,福井優也,坂本毅治,村上善則
    • 学会等名
      先端モデル動物支援プラットフォーム「若手支援技術講習会2017」
  • [学会発表] がん微小環境の制御に関わる分子機構の研究2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治
    • 学会等名
      第26回日本がん転移学会学術集会・総会
    • 招待講演
  • [学会発表] Mint3は解糖系を介してがん転移性ニッチを形成する2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治
    • 学会等名
      第5回がんと代謝研究会
  • [学会発表] インフルエンザウイルス感染におけるHIF-1活性化因子Mint3を介した自然免疫応答機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      植松崇之、藤田智子、中岡寛樹、原敏朗、小林憲忠、村上善則、清木元治、坂本毅治
    • 学会等名
      第28回日本生体防御学会学術総会
  • [学会発表] Control of metastatic niche formation by targeting APBA3/Mint3 in inflammatory monocytes2017

    • 著者名/発表者名
      Takeharu Sakamoto
    • 学会等名
      7th International Conference on Tumor-Host Interaction and Angiogenesis
    • 国際学会
  • [学会発表] Mint3は線維芽細胞においてL1CAM 発現を誘導することでインテグリンα5β1を介したがん細胞増殖と造腫瘍能を促進する2017

    • 著者名/発表者名
      坂本毅治,清木元治
    • 学会等名
      第21回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [備考] 東京大学医科学研究所人癌病因遺伝子分野HP

    • URL

      http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/hitogan/index.html

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi