研究課題/領域番号 |
15K06831
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鯉沼 代造 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80375071)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 癌 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
スキルス胃がんにおいてはTransforming growth factor-β (TGF-β)ファミリーの病態への深い関与が明らかになっている。研究代表者はこれまでにハイスループットシークエンシングを用いたシグナル伝達・転写制御解析を行うことで、スキルス胃がん細胞特異的なTGF-β下流因子Smad2/3の結合部位のin vitro及びin vivoでの同定に成功している。本研究ではTGF-β刺激後の経時的なSmad2/3結合部位の変化とマウス腫瘍移植モデルでのSmad2/3結合部位の特徴に着目し、スキルス胃がんで観察されるTGF-βの各種作用が如何なる機構で発現しているか、俯瞰的な視野から真に重要な制御因子・経路を明らかにすることを目的としている。 平成27年度はChIP-seqで見いだされた経時的なSmad2/3結合部位の変化について、結合部位のモチーフ解析とトランスクリプトーム解析を行った。またin vivo 特異的Smad2/3結合部位の塩基配列についてモチーフ解析、in vitroとの比較を行った。その結果それぞれの条件においてより強く結合している可能性がある転写因子ファミリーを予測することができた。また検討に用いたスキルス胃がん細胞株と同一患者由来の低悪性度・低腫瘍形成性株のRNA-seqのデータ取得を行って比較解析した。本研究プロジェクトの検討内容を含む成果を国際学会で発表したほか、部分的に本研究を通して副次的に得られた成果を国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スキルス胃がん細胞にTGF-β刺激を行い1.5および24時間後のSmad2/3 ChIP-seq結合部位情報をもとに比較解析した。それぞれの群について、結合部位に濃縮して存在するモチーフ配列をMEMEなどを用いてde novoで計算した。その結果それぞれの条件においてより強く結合している可能性がある転写因子ファミリーを予測することができた。さらにTGF-β刺激による遺伝子発現変化についてRNA-seqデータの取得を行った。本研究プロジェクトの検討内容を含む成果を国際学会で発表したほか、部分的に本研究を通して副次的に得られた成果を国内学会で発表した。以上のことから今年度予定していた検討を進めることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初計画通り制御因子・経路候補についてSmad2/3結合およびTGF-β応答性への影響、腫瘍形成能への影響を指標としてshRNAによるloss of functionを中心とした評価を行う。さらにin vivo特異的制御経路が細胞外・腫瘍間質細胞等からのシグナルに由来する可能性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度のモチーフ解析等の結果により、複数の制御候補分子群についてsiRNAや抗体を用いて並行して実験を行う予定であったが、優先度の高い制御候補が見出されたため、これについての検討を先に行うことにし、現在も検討を継続中である。そのため追加検討用のsiRNAや抗体購入は次年度にその結果を踏まえて行うことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に全額物品費として使用する計画である。
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