研究課題
以前の研究実績の概要に記したように、研究費申請後にHGC-20というスキルス胃がん患者由来の腫瘍移植系(PDX)を樹立した。このHGC-20細胞は、マウス皮下に移植するとコラーゲン線維に富むスキルス型の腫瘍を形成する。従って、スキルス胃がん形成にはがん関連線維芽細胞(CAF)は必ずしも重要ではないことが明らかになった。そこで、胃がん幹細胞とCAFとの相互作用を解析する実験は中止し、HGC-20 細胞から得られるがん幹細胞を用いて、スキルス胃がん幹細胞の治療に有効な薬剤を検討した。その結果、mTOR阻害剤がスキルス胃がん幹細胞の増殖を特異的に抑制することが明らかになった。HGC-20細胞は、細胞株よりも抗がん剤に強い抵抗性を示した。HGC-20細胞で発現している薬剤抵抗関連遺伝子を用いて、胃がんをクラスター解析したところ、スキルス胃がんは二つのクラスターに分かれることが示された。突然変異数解析などの結果、クラスターIの低分化型胃がんは正常胃上皮から形成されるが、クラスターIIの低分化型胃がんは分化型胃がんから形成されることが示された。クラスターIIには、突然変異が多いMSI型の低分化型胃がんが多数含まれていた。突然変異が多い腫瘍は免疫チェックポイント阻害剤に反応することが報告されている。よってクラスターIIに含まれる低分化型胃がんは、mTOR阻害剤だけでなく、免疫チェックポイント阻害剤にも反応すると考えられる。これまで、スキルス胃がんは突然変異が少ないと報告され、免疫チェックポイント阻害剤は治療に有効ではないと考えられてきた。我々の研究により、一部のスキルス胃がんは多くの突然変異を含むこと、その治療にはmTOR阻害剤と免疫チェックポイント阻害剤が有効であることが示された。これらの結果は、難治性のスキルス胃がんの治療に大きく貢献すると考えられる。
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Journal of Experimental & Clinical Cancer Research
巻: 38 ページ: 127
doi.org/10.1186/s13046-019-1121-3