研究課題
我々は骨微小環境における前立腺がんや乳がんの増殖を解析できる動物モデルを開発し、プロテアーゼにより可溶化されたReceptor activator of NF-kB ligand (RANKL)や骨基質由来のTGFβが、骨転移巣の進展に関与すること、さらにmicroRNA-205(miR205)が、TGFβreceptor 1およびRANKの発現を制御して骨微小環境に豊富なTGFβとRANKLを利用して増殖することを明らかにした。次に乳がん骨転移巣におけるがん幹細胞の関与を検索する目的で、骨および皮下微小環境の違い、TGFβシグナルの関与、増殖初期と末期の違いを動物モデルを用いて検索した。我々の動物モデルを用いた検索では、骨微小環境での増殖する乳がん細胞は、がん幹細胞のマーカーのうちSOX2およびCD166が陽性であった。これらのマーカーが陽性となる腫瘍細胞の数は、骨微小環境では皮下微小環境に比べて多かった。TGFβシグナル阻害剤を投与された腫瘍組織を用いた検索では、骨微小環境におけるがん幹細胞マーカー陽性細胞率は皮下微小環境と同じレベルにまで低下していた。骨微小環境における増殖末期に観察されたSOX2およびCD166陽性細胞は、増殖初期にはほとんどみられず、がん細胞が進展するのに伴いその陽性細胞率は増加することが明らかとなった。骨微小環境で増殖するがん細胞にはがん幹細胞が含まれており、骨微小環境は、がん転移の幹細胞のnicheでありTGF-βの関与が示唆された。このように、原発巣から骨微小環境へ移動した腫瘍細胞は、miR205による発現制御メカニズムにより微小環境に適応し増殖を続けた結果骨転移巣が形成されることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では、骨微小環境および肺微小環境におけるがん幹細胞の増殖を検索することが目的であったが、本年度は骨微小環境と皮下微小環境におけるがん幹細胞の増殖を検索した。その結果、骨微小環境における乳がん幹細胞の増殖にTGF-betaが関与すること、また幹細胞のタイプは骨微小環境と皮下微小環境で異なることが明らかとなった。
本年度検索した骨、肺微小環境において乳がん細胞が増殖する組織を用いる。 microRNA- Arrayを用い骨および肺微小環境で共通して発現低下するmiRNA、骨または肺微小環境に特異的に発現低下するmiRNAを同定する。同定されたmicroRNAの過剰発現株を作製し、動物実験により骨および肺微小環境におけるがん細胞の増殖に及ぼす影響を検索する。さらにこれらのmicroRNAが制御する遺伝子を同定し、microRNA過剰発現株に強制発現あるいは発現抑制させることでその機能を解析する。
抗体購入費として使用する予定であったが、当該年度中には抗体が到着しなかったため
抗体購入費して使用する予定
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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