研究課題
我々は骨微小環境におけるがんの増殖機構を解析できる動物モデルを開発し、骨微小環境はがん幹細胞のnicheであること、骨基質由来のTGFβは破骨細胞へ分化誘導を促進することを明らかにした。本研究では骨髄間葉系幹細胞の関与を明らかにする目的で、以下の2つ研究をおこなった。Ex.1)骨髄間葉系幹細胞は造骨性骨転移巣の形成に関与すると考え、造骨性骨病変を形成する前立腺がん細胞株の培養上清のエクソソーム中に含まれるmiRNAの網羅的発現解析を行なった。その結果、造骨型骨病変を形成するがん細胞株からhsa-miR-940の分泌が亢進していることが判明した。さらに、溶骨型骨病変を形成するヒト乳がん細胞株にhsa-miR-940を過剰発現させた細胞株を用いた動物モデルによる解析で、がん細胞から分泌されたhsa-miR-940が周囲の間葉系細胞に取り込まれ、造骨型骨病変の形成を誘導することが判明した。Ex.2 )マウス乳がん骨微小環境モデルを用いて、ヒト由来OPG(hOPG)を投与すると骨破壊が抑制され、骨微小環境ではマウス由来のOPG(mOPG)の発現が上昇することを見出した。このメカニズムの解明を目的として、マウス乳癌細胞株(CL66M2)、破骨細胞前駆細胞株(RAW264.3)およびマウス骨髄間葉系幹細胞株(mMSC)にin vitroでhOPGを処置し、培養上清中のmOPGの量を測定した。その結果、培養上清中のmOPGの量はmMSCにおいて上昇したが、RAW264.3およびCL66M2では上昇しなかった。これらの結果から、骨髄間葉系幹細胞は骨微小環境において増骨性変化に関与する一方で破骨細胞の誘導を抑制することが明らかとなり、がん幹細胞、骨髄間葉系幹細胞、破骨細胞の前駆細胞のそれぞれの分化誘導メカニズムが骨転移巣の進展に関与すること示唆された。
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