研究課題/領域番号 |
15K06838
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
那須 亮 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (30466859)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / 癌幹細胞 / 膠芽腫 / Wntシグナル / LGR5 / APC / Axin1 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
膠芽腫は成人脳腫瘍の中で最も罹患率が高い、極めて予後不良な悪性腫瘍である。本研究は、膠芽腫幹細胞におけるR-spondin-LGR5-APC軸によるWntシグナル活性化の分子機構を明らかにすることにより、膠芽腫幹細胞および微小環境との相互作用を標的とした新規脳腫瘍根絶技術の開発を目指す。 R-spondin-LGR5-APC軸の分子機構を解析するために、LGR5の相互作用因子を調べた結果、Wntシグナルの主たる制御因子であるβ-catenin分解複合体との相互作用を見出した。さらに、R-spondin/Wnt刺激により、LGR5複合体からAxin1が解離することを明らかにした。疑似リン酸化変異体を用いた実験から、Axin1 160番目のスレオニン残基のリン酸化修飾が、Axin1-APC相互作用の解離を促進していることを見出した。 部位特異的なタンパク質リン酸化修飾の生物学的意義は、点変異導入ノックインマウスを作製することにより個体レベルで解析することができる。Axin1 T160A非リン酸化変異体マウスからWntシグナル抑制状態の表現型を、Axin1 T160D疑似リン酸化変異体マウスからWntシグナル亢進状態の表現型を見出すことができる。CRISPR/Cas9システムを用いてAxin1 T160点変異ノックインマウスの作製を試みた結果、Axin1 T160A変異が導入された個体を得た。その一方で、Axin1 T160D変異体を得ることは出来なかった。 Axin1 T160A非リン酸化変異体マウスは正常に発生し、見かけ上明らかな表現型は見出されなかった。そのため今後は膠芽腫モデルマウスと掛け合わせることにより、膠芽腫幹細胞におけるR-spondin-LGR5-APC軸の治療標的としての有効性を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゲノム編集技術により点変異導入ノックインマウスを短時間で作製することが出来たため、個体レベルの解析を進めている。しかし、Axin1 T160A非リン酸化変異体マウスは正常に発生し、見かけ上明らかな表現型は見出されなかった。そのため、今後は膠芽腫モデルマウスと掛け合わせを行う。
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今後の研究の推進方策 |
近年、悪性腫瘍に対する免疫療法が有望視されている。実際に膠芽腫患者に対しても免疫チェックポイント阻害薬の治験が精力的に進められている。悪性黒色腫においてはWntシグナル活性化が腫瘍細胞の免疫逃避を促進することが知られているが、膠芽腫のWntシグナルと免疫逃避の関連性は明らかにされていない。そのため、今後はAxin1 T160D変異体マウスと膠芽腫モデルマウスを掛け合わせることにより、膠芽腫幹細胞におけるR-spondin-LGR5-APC軸の治療標的としての有効性を評価すると共に、Wntシグナルと免疫逃避の関連性を解析し、膠芽腫に対する免疫療法の有効性を検討する。
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