研究課題
初年度には加齢に伴って骨髄間質細胞由来エクソソームに内包されるmiRNAのプロファイリングが異なることを明らかにした。次年度では、若年者骨髄間質細胞が放出するエクソソームに、多発性骨髄腫細胞が誘導する抗瘍血管新生を抑制する効果があること、さらに、この若年者骨髄間質細胞由来エクソソームに特異的に内包されているmiRNA(miR-340)を高齢者骨髄間質細胞由来エクソソームに直接的に導入して作成した「改変エクソソーム」でも同様の抗腫瘍血管新生能を示すことも明らかにした。最終年度では、若年者骨髄間質細胞由来エクソソームの抗腫瘍血管新生メカニズムを明らかにするため、miR-340の標的因子の探索を行った。miRTarBaseを用いたターゲット検索から数種類の血管新生に関与する因子群に候補を絞り解析を進めた。HUVECsを用いたin vitro系によって構築したlucuferaseレポーターアッセイの結果からmiR-340が直接的にcMETの発現を阻害することを見出した。一方で、若年者骨髄間質細胞由来エクソソームは腫瘍細胞の細胞増殖には影響を与えないことを示すデータも得られている。さらに、若年者由来骨髄間質細胞の培養上清が腫瘍細胞(多発性骨髄腫細胞株RPMI8226)の増殖抑制に関与する知見も得られており、現在培養上清中の抗腫瘍効果に関与する因子についてさらなる解析を進めている。また、健常者由来骨髄間質細胞との比較対象として用いた多発性骨髄腫患者由来骨髄間質細胞についても解析を進めている。そして、患者由来骨髄間質細胞が放出するエクソソームに特異的に内包されているmiR-10aが多発性骨髄腫細胞へとエクソソームを介して受け渡され、腫瘍細胞の増殖を促進することも見出している。「腫瘍発生抑制型エクソソーム」と「腫瘍進展促進型エクソソーム」の両面から解析を進め、exosome-based therapyの開発へと結びつける。
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