研究課題/領域番号 |
15K06842
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
出口 敦子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10422932)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝転移 / がん微小環境 |
研究実績の概要 |
がんが遠隔臓器に転移する場合、ある程度の指向性を持ち、転移先を決定していると考えられている。本研究では、肝臓における転移前微小環境形成因子の転移促進の分子機序を明らかにすることを目的とし、将来的に、肝指向性がんや転移性がんに対する既存の抗がん剤との併用療法の展開や転移早期予測分子マーカーとしての確立を目指す。当該年度中に下記1-2の検証を行った。 1. Toll様受容体4内因性リガンドS100A8のTLR4/MD-2活性化と骨髄由来細胞の動員 エンドトキシンフリーグレードS100A8リコンビナントタンパク質をマウスに投与すると骨髄由来抑制細胞の動員が亢進することを見いだした。この細胞集団が、遠隔臓器における転移前微小環境だけでなく、がん原発巣に存在するがん微小環境においても重要な役割を果たすことを示唆した。S100A8の機能をさらに明らかにするため、TLR4/MD-2活性化の分子機序を解析し、結合部位の同定とマウスモノクローナル中和抗体の作製を行った。 2. 転移前肝微小環境における骨髄由来細胞の動員の機能解析 大腸がん同所移植マウスモデルを用いて、転移前肝微小環境形成後、肝臓における免疫応答細胞群を同定した。さらに、同定した免疫応答細胞を培養し、転移前微小環境形成因子添加後、サイトカイン等の発現を解析した。骨髄由来細胞GFP発現レポーターマウスを用いて骨髄から動員される細胞の同定を行った。また、ヒト臨床検体での転移前微小環境形成因子の血中濃度を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
候補因子の転移前肝微小環境形成への関与をin vivoレベルで検証するために作出した転移前微小環境形成因子遺伝子欠失マウスの戻し交配に少々時間がかかったが、転移前肝臓に集簇する細胞群の同定をほぼ今年度中に終えることができた。また、転移前肺微小環境形成因子S100A8のTLR4/MD-2結合部位の解析とモノクローナル中和抗体の作出することができ、作出した抗体は、次年度に解析を予定している臓器指向性の検証に用いる。
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今後の研究の推進方策 |
転移前微小環境形成因子遺伝子欠失マウスに大腸癌細胞等を移植し、肝臓や他の臓器への転移、原発巣の進展に与える転移前微小環境形成因子の影響を検証する。平成28年度に引き続き、転移前微小環境形成担当細胞による転移促進の分子機序の解析と臓器指向性の検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入希望価格が残額を上回ったため、当該年度中に購入が不可能であるため、次年度、経費の一部として使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に必要試薬などの消耗品等の購入費の一部にあてる。
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