研究課題
免疫を司るマスト細胞の増殖は,細胞膜に分布する受容体と増殖因子の結合によって調節される。Kitチロシンキナーゼは,マスト細胞の細胞膜に発現し,リガンド刺激を下流に伝達することで,細胞増殖・生存に重要な役割を果たす。したがって,Kitの恒常的活性化変異はマスト細胞を無限増殖に導き,マスト細胞腫瘍の発症に繋がることが報告されている。最近,我々は,研究の過程で複数のマスト細胞腫瘍株を樹立し,その中にKitの活性化変異を持つものと持たないものを見出した。すなわち,マスト細胞の腫瘍化機構には,Kit変異に依存するものと依存しないものが存在することが示唆され,我々が樹立した細胞株を用いることで本疾患の複数の発症機序を理解できるものと期待される。本年度は,細胞増殖に重要なSTAT5,Aktが,それら細胞株においてどのような経路によって活性化されているかを調べた。Kit変異を持つマスト細胞では,Kitが細胞内小器官に集積しており,そこでAkt, STAT5を活性化していることを明らかにした。一方,Kit変異を持たない細胞では,Akt, STAT5の活性化はKit非依存的に起き,細胞膜の因子によって活性化されていることを示唆するデータを得た。本課題では,マスト細胞腫の増殖に必要なAkt, STAT5活性化が起こる場がKit変異の有無によって異なることが明らかとなった。また,Kit変異を有するマスト細胞腫については,細胞内小器官の機能を阻害することで増殖シグナルを抑制できることを報告した。今後,樹立した複数のマスト細胞腫を用いて,発症機序の多様性の解明と,その理解を応用した新たな治療法の開発に繋げたい。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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