研究課題
生活習慣病は心血管系臓器障害のみならず、腎臓障害を引き起こし、腎癌のリスクを上げることが知られている。しかし、なぜ生活習慣病が癌を引き起こすのか、明確な成因はまだ明らかになっていない。Hypertension-related, calcium-regulated gene(HCaRG/COMMD5)は腎臓の近位尿細管で産生されており、我々はこれまでに、HCaRGがp21の発現誘導を介し、障害を受け脱分化した尿細管上皮細胞の分化を促進させ、急性腎障害後の尿細管の修復を促進し、生存率を改善させる事を報告してきた。そこで、本研究ではHCaRG/COMMD5の持つ間葉上皮移行促進作用に着目し、近位尿細管細胞由来の淡明細胞型腎細胞癌におけるHCaRGの抗腫瘍効果について検証した。生活習慣病とHCaRGの発現、腎細胞癌の進展・予後との因果関係を明らかにするために、腎細胞癌の摘出手術を受けた患者の正常の尿細管と癌のHCaRGレベルを比較した。腎細胞癌のHCaRGは、近位尿細管に比べ腎細胞癌で低下していた。また、近位尿細管でHCaRGが高い患者では、HCaRが低い患者に比べて腫瘍径は小さく、疾患特異的5年生存率も有意に改善していた。加えて、糖尿病患者で近位尿細管のHCaRGが高い患者は、腎機能の正常であったが、HCaRGが低い患者は、腎機能障害を認めていることが多かった。そこで、近位尿細管で産生されたHCaRGが、腫瘍進展の抑制や腎障害の進行抑制に働いているのかどうかを検討した。尿細管培養細胞の培養上清中にHCaRGタンパクは分泌しており、分泌型HCaRGは、腎癌細胞の増殖やスフェア形成を抑制した。また、近位尿細管特異的HCaRG高発現遺伝子改変マウスを用いて、シスプラチン曝露による薬剤性急性腎障害モデルを作製したところ、HCaRGは腎機能の悪化を軽減し、腎保護効果を示した。
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Oncotarget
巻: 8 ページ: 69559-69576
10.18632/oncotarget.18012