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2016 年度 実施状況報告書

骨肉腫転移巣における治療抵抗性獲得の分子機構解明と克服

研究課題

研究課題/領域番号 15K06845
研究機関星薬科大学

研究代表者

清水 孝恒  星薬科大学, 薬学部, 准教授 (40407101)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード骨肉腫 / 転移 / がん微小環境 / 治療抵抗性
研究実績の概要

前年度の研究から、化学療法に伴い、骨肉腫担がんマウスの肺転移巣ではGpnmb陽性マクロファージが集積することが明らかとなった。このマクロファージの化学療法抵抗性に関する役割を解明するため、m-Csf受容体阻害薬を投与し除去を試みたが、十分な減少効果は見られなかった。現在、複数のm-Csf受容体阻害薬、及び免疫修飾薬、サイトカインを準備して転移巣のマクロファージを減少させる条件を検討している。
転移巣形成に重要な細胞形質には足場非依存性増殖能がある。転移巣の形質の一部をin vitroで模倣するため、非接着条件で骨肉腫細胞を培養したところ、接着培養に比較して抗がん薬に対する感受性が有意に低下した。接着培養条件と非接着培養条件では網羅的解析結果から、遺伝子発現、細胞内代謝に大きな違いが認められた。現在、非接着条件における抗がん薬抵抗性獲得の分子機構の解明を進めている。
一方、非接着条件下で抗腫瘍効果を示す既存薬剤をスクリーニングした結果、スタチン系薬剤、calcitriolが候補薬剤として抽出された。強い活性を示したsimvastatinは、in vitroでAMPK-p38MAPKの活性化を介して骨肉腫細胞にapoptosisを誘導した。in vivoにおいても無脂肪食との組み合わせで、simvastatinは強力な抗骨肉腫効果を示した(Mol Cancer Ther, 2017)。calcitriolは骨肉腫細胞へin vitro、in vivoでER stress反応を誘導することにより細胞周期停止を誘導することが明らかとなった(投稿中)。しかし、残念なことにsimvastainもcalcitriolも単独では、in vivoにおいて転移巣に対する強力な効果を示さなかった。現在、他の候補薬剤に関しても解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

転移巣における治療抵抗性機構に免疫細胞の関与が疑われたものの、候補となる免疫細胞を修飾するin vivoの条件を検討中であり、具体的な治療効果への検証が進んでいない。さらに、昨年からの課題であったflow cytometerやマイクロダイセクション法による転移巣での腫瘍域、正常域を分けたサンプル抽出は現在まで施行していない。これらの解析を施行することにより、これまでに得られた肺全体における治療前後の分子変化の知見と合わせて効率的に信頼性の高い候補分子を絞り込む必要がある。一方、新たな展開として、転移巣の骨肉腫の細胞形質をin vitroで再現する解析系を樹立し、既存薬スクリーニングから転移巣に直接効果を示す薬剤の抽出を試みた。in vivoから得られた分子情報と薬剤の機序を総合して転移巣の治療抵抗性を解除する治療法開発を効果的におこなう基礎が築かれた。

今後の研究の推進方策

[肺転移巣における治療抵抗性分子機構の解明と克服]
転移巣を含む肺の治療前後の分子変化とin vitroの薬剤スクリーニングから得られた知見に新たな解析を追加して、転移巣の治療抵抗性の分子機序の解明を進めて行く。flow cytometerやマイクロダイセクション法による転移巣での腫瘍域、正常域をわけたサンプル抽出を行う。サンプルを用いて網羅的解析(遺伝子発現、miRNA発現、メタボライト)を施行し、治療に伴う転移巣での分子変化に関する新たなプロファイルを得る。そして、これまでに抽出された分子変化と組み合わせることで信頼性の高い候補分子をさらに絞り込む。絞り込まれた候補分子は、転移巣において変化の由来となる細胞種、非細胞成分(液性因子、細胞外基質)を解明する。さらに、化学療法に伴い分子変化をおこす原因を解明する(DNAメチル化、ヒストン修飾などエピジェネティクス修飾変化のChIP-seq解析などを用いる)。抽出された分子、シグナル伝達経路に関しては、リコンビナントタンパクや阻害化合物の使用、過剰発現、ノックダウン実験、使用可能な遺伝子改変マウスを利用して、転移巣における治療抵抗性への関与をin vitro、in vivoの実験で検証する。さらに、ドラッグスクリーニングより得られた知見から、治療抵抗性解除に寄与する薬剤の抽出をおこない、骨肉腫転移巣への新規治療法を開発する。マウスモデルから得られた機序がヒト骨肉腫においても関与しうるか普遍性を検討するため、tissue microarrayをはじめ、臨床サンプルを用いた解析の準備を進める。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Robotic crowd biology with Maholo LabDroids2017

    • 著者名/発表者名
      Yachie Nozomu、Robotic Biology Consortium、Natsume Tohru
    • 雑誌名

      Nature Biotechnology

      巻: 35 ページ: 310~312

    • DOI

      10.1038/nbt.3758

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Simvastatin-induced apoptosis in osteosarcoma cells: A key role of RhoA-AMPK/p38 MAPK signaling in antitumor activity2017

    • 著者名/発表者名
      Kamel WA, Sugihara E, Nobusue H, Yamaguchi-Iwai S, Onishi N, Maki K, Fukuchi Y, Matsuo K, Muto A, Saya H, Shimizu T
    • 雑誌名

      Molecular Cancer Therapeutics

      巻: 16 ページ: 182-192

    • DOI

      doi: 10.1158/1535-7163.MCT-16-0499

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] マウス骨肉腫幹細胞と疾患克服への挑戦2017

    • 著者名/発表者名
      清水孝恒
    • 学会等名
      日本薬学会東海支部特別講演会
    • 発表場所
      名古屋
    • 年月日
      2017-01-31 – 2017-01-31
    • 招待講演
  • [学会発表] スタチン系薬剤はメバロン酸合成経路を阻害し、AMPK、p38MAPKの活性化を介して骨肉腫に抗腫瘍効果を発揮する2016

    • 著者名/発表者名
      カメル・ワリード、杉原英志、山口さやか、信末博行、大西伸幸、武藤章弘、佐谷秀行、清水孝恒
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] Statins induce apoptosis in osteosarcoma cells by activation of Ampk and p38 via suppression of mevalonate pathway2016

    • 著者名/発表者名
      Kamel AW, Sugihara E, Yamaguchi S, Nobusue H, Maki K, Muto A, Saya H, Shimizu T
    • 学会等名
      American Association for Cancer Research Annual Meeting 2016
    • 発表場所
      New Orleans, USA
    • 年月日
      2016-04-16 – 2016-04-20
    • 国際学会
  • [備考] 星薬科大学ホームページ

    • URL

      http://www.hoshi.ac.jp/site/kyoiku/kyoushitsuhgaid/15kyoushitsu.byoutai.php

  • [備考] 慶應義塾大学医学部・先端医科学研究所・遺伝子制御研究部門ホームページ

    • URL

      http://www.genereg.jp/html2/html/staff/NInst/Shimizu/

  • [備考] Research Map

    • URL

      http://researchmap.jp/shimizutakatsune/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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