研究実績の概要 |
骨肉腫肺転移巣における治療抵抗性の分子機構を解明するため、本年度もマウス骨肉腫モデル(AXT細胞)を用いて解析を行った。既存の化学療法前後における分子変化を明らかにするため、皮下移植により骨肉腫を形成したマウス(未治療マウスと治療施行マウス)から、原発巣と肺転移巣(実体顕微鏡目視下)を採取しRNAを回収した。網羅的遺伝子解析の結果、治療後の転移巣で2倍以上発現が上昇した遺伝子は126個、4倍以上のものは1個に絞られた。原発巣では上昇せず転移巣のみで上昇するものは112個であった。また、転移巣と原発巣で伴に上昇するものは14個認められた。これらの遺伝子をAXT細胞においてノックダウン、ノックアウトして治療抵抗性に関与する役割について解析を進めている。 解析の過程から、代謝に関連する分子変化がみられ、転移巣における特異的代謝の存在が示唆された。新たな知見を得る目的で、転移巣、原発巣から回収した腫瘍細胞を用いてメタボローム解析を行った。その結果、転移巣では原発巣に比較して、解糖系、核酸合成経路を含む複数の経路で代謝の亢進が示唆された。代謝酵素の阻害剤を用いて転移巣の化学療法の感受性を上げることができるか検討を行っている。さらに、転移巣では哺乳類の細胞では通常見られないメタボライトの存在が認められ、オンコメタボライトの可能性や転移巣の維持、治療抵抗性への関与など、その意義の解明を進めている。 一方、化合物のスクリーニングからCalcitriol(Cancer Sci,2017に掲載)やMEK阻害剤が接着、非接着の両条件でAXT細胞に著明な効果を示す薬剤として抽出された。Calcitriolはin vivoで転移巣を縮小する効果は弱かったが、MEK阻害剤は単独投与で血中循環がん細胞数と転移巣を縮小し、さらに化学療法との組み合わせで著明な抗腫瘍効果を認めた(投稿準備中)。
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