研究実績の概要 |
非遺伝毒性発がん物質の発がん性試験は、その発生機序の多様さから、動物実験以外では困難であるとされている。しかし悪性度の高いがん細胞は①足場非依存的な自立増殖、②分化の消失、③高い解糖性、④増殖因子やプロテアーゼの分泌という共通した性質を獲得しており、それぞれの性質によって、関連した蛋白質のリン酸化ががん細胞間で共通して観察される。近年、原ガン遺伝子の変異以外に、意味のないと考えられていたサテライト変異の集団も腫瘍の悪性化に関係するという結果が、腫瘍SNPの大規模解析から明らかにされつつある。そこで、膨大なリン酸化サイトの中から発がんに影響のあるリン酸化サイトを抽出する方法の開発として、本課題では、まずヒトにおいてリン酸化サイト上のがん特異的変異が細胞がん化にどうかかわるのか包括的に理解するために、このリン酸化モチーフ上の腫瘍組織特異的な変異から、細胞がん化に影響を持つ変異を抽出する方法の開発を試みた。 まずヒトゲノム上1,003,756サイトのセリン、スレオニン、チロシン残基を中心とするモチーフ構造、進化的保存性、キナーゼ予測のためのキナーゼ-基質情報をアサインしたデータベースを使い、International Cancer Genome Consortium (ICGC)(https://icgc.org/)に登録されている16,164,044のがん特異的変異から、アミノ酸置換のあるリン酸化モチーフ上の114,262変異をピックアップし、がん組織でのモチーフ上の変異の偏りから、リン酸化モチーフと細胞がん化との関係を調べた。
|