研究実績の概要 |
申請者は、これまでの研究から178のリン酸化モチーフを同定しリン酸化モチーフの生理的重要性のパラメーターとして進化的保存性を利用し、リン酸化シグナルの解析を行ってきた(Yoshizaki H Gigascience 2015)。本課題ではこれらのデータを利用し、がん特異的な変異とリン酸化モチーフとの間に関連性を見出せるか調べた。International Cancer Genome Consortium (ICGC)(https://icgc.org/)に登録されている16,164,044のがん特異的変異から、アミノ酸置換のあるリン酸化モチーフ上の114,262変異をピックアップし、がん組織でのモチーフへの変異の偏りと各リン酸化モチーフの進化的保存性との間で相関を調べた。この結果、リン酸化モチーフ上のがん特異的変異導入頻度は、リン酸化モチーフの進化的保存性と正の相関を持つことを明らかにした。しかも、この相関は健常者SNPデータで確認されなかった。これはがん組織では、生理的重要性の高いリン酸化モチーフに変異が蓄積しやすいことを意味し、がん組織のリン酸化モチーフ上の変異は、ゲノム不安定性によるランダムな変異の挿入でなく自然選択的に挿入されていることを示唆した。これらの結果から、リン酸化モチーフ解析に着目した発がんシグナル伝達経路予測が可能であることが期待される。
|