研究課題
近年我々は変異KRAS陽性癌細胞は独自の癌微小環境を構築していることを突き止めた。本研究では、変異KRASカスケードが発現制御する微小環境、及び、癌分子機構をシングルセルレベルで解明し、微小環境の構築を阻害する物質の同定により、新たな癌治療法への基盤を構築することを目的とした。H27年度から、3次元浮遊培養システムを用いて変異KRAS特異的にスフェロイドの縮小をきたす天然物由来化合物のスクリーニングを行ってきた。3次元浮遊培養を用いることで、より簡便に生体内類似条件で変異KRASが制御する分子を阻害する薬剤が選別可能である。実際にはすでに作製しているHKe3-wtKRASおよびHKe3-mtKRASを使用し、理研より先行取得している約400種の天然化合物パイロットライブラリーの阻害効果を検討した。具体的には培養3日目,6日目に1 wellにひとつ形成された細胞隗の画像をIn cell analyzerで取得し、断面積を計測した。さらに、正常クリプト様の構造をなすHKe3-wtKRASにて変化がないことを条件に取り込むことで、副作用が少ないと期待できるヒット化合物の取得を目指した。コアライブラリースクリーニングでは8個の化合物を同定し、本年度は、8個の化合物のそれぞれの派生物117個に対する二次スクリーニングを行い、42個の化合物を同定することに成功した。そのうちいくつかはヌードマウスモデルに使用し、良好な結果が得られている。また、変異KRASが発現制御する遺伝子のうち、AKTシグナルの活性化に関与するPDE4やDNA修復遺伝子群の発現誘導に関するALPK2に変異導入し安定発現細胞を樹立し、機能解析を行った。その結果、細胞塊におけるPDE4阻害剤の有効性やALPK2の希少変異の存在及びその変異によって生じる細胞極性の異常を解明した。
2: おおむね順調に進展している
理研より取得した約400種の天然化合物由来のコアライブラリーより8個のコア化合物が取得され、さらにこれらの派生化合物117個のスクリーニングを施行し、42個の化合物が取得された。また。変異KRASが制御する個々の分子に関してもグラスゴー大学やロシアブロヒン癌センターとの国際共同研究を通して機能解析や制御化合物の探索を行い論文投稿しアクセプトされた。
今後はin vivoで効果が認められる化合物に結合する蛋白を同定予定である。最も効果の高い化合物は官能基置換により最適化し、特許取得を目指す。また、PDE4,ALPK2さらには同定された蛋白を足掛かりに、3次元環境特異的な新たなKRASシグナルの解明を目指す
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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http://www.gla.ac.uk/researchinstitutes/icams/staff/georgebaillie/#/grants