研究課題/領域番号 |
15K06849
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
椎崎 一宏 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (20391112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 第三世代シーケンサー / DNA付加体 |
研究実績の概要 |
化学物質によるDNA付加体が遺伝子変異を引き起こすことは良く知られている。発がんがたった一分子のDNA付加体によって引き起こすことも理論的には考えられる。この一分子イベントを観察するために、第3世代シーケンサーによる一分子DNAの配列解析を用いた。この配列解析方法においてポリメラーゼ伸長反応は修飾塩基部位で遅延することから、伸長速度遅延によって一分子のDNA付加体の部位を検出することが可能かを検証した。まず、O6-methyl-deoxyguanosine (O6-MedG)、O6-carboxymethyl-deoxyguanosine(O6-CMedG)、8-oxo-deoxyguanosineを一塩基含むオリゴヌクレオチドを合成し、環状構造のテンプレートを作成した。この付加体を持つDNAをPacBio RSIIシーケンサーで解析したところ、ポリメラーゼ伸長反応の遅延がDNA付加体部位で観察された。付加体塩基での伸長速度遅延は平均で通常の塩基の伸長速度の100倍程度であったが、O6-MedGとO6-CMedGでの伸長速度遅延の値は、大きな差は見られなかった。さらに各リードの個別解析集計結果により伸長速度遅延は120倍付近をピークとして20倍から200倍の間で正規分布しており、常に一定の遅延を示すわけではない事が分かった。これらの実験結果により、第3世代シーケンサーによるDNA付加体検出が可能であることが分かったが、同時に付加体の種類の同定には不向きであることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、第3世代シーケンサー(PacBio RSII)を用いた各種DNA付加体の検出が可能なことが明確になるとともに、その解析方法に関する基礎的なデータを得られた。リード全体の解析と共に、個別のリードの結果を解析を行った結果、単分子のDNAでの伸長反応遅延についても解析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
DNA付加体による伸長速度遅延は常に一定の値を示すわけではなく、付加体の種類の同定は難しいことが予測された。また、DNA付加体の生成頻度は極めて低いことから、付加体特異抗体によるキャプチャーによって付加体を持つDNAフラグメントを濃縮することが必要であると考えられる。同時にこの方法では、テンプレートとなるDNAに含まれる付加体の種類を選別することも可能であると考えられるため、次年度の研究課題の一つとして進めたい。
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