研究課題/領域番号 |
15K06850
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
上北 尚正 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 応用科学群, 准教授 (50373402)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん転移 / 足場非依存性 / 細胞運動能 / 浸潤 / 細胞内シグナル / 細胞死 |
研究実績の概要 |
(1)癌の特性である足場非依存性に関与するCDCP1細胞外ドメインの探索 CDCP1細胞外ドメイン欠失を用いた研究から、がん細胞の足場非依存性の制御にはCDCP1の細胞外ドメインによる同種2量体形成が必要である事を、昨年の実験計画で明らかにした。本年度はCDCP1細胞外ドメインをさらに詳細に調べるため、CDCP1細胞外ドメイン内に存在する3つの内、2つのCUBドメインに着目し、大腸菌により2つの異なるCUBドメインの蛋白質を発現させた。肺がん細胞にN末端にFLAG標識を付加したCDCP1蛋白質を用いてファーウエスタンをおこなったところ、CUB2ドメインにおいてFLAGを付加したCDCPとの結合が確認された。この結果は、CDCP1の細胞外ドメインの中でもCUB2ドメインが足場非依存性に重要であることを示唆している。肺がん細胞にCUB2蛋白質を添加した実験では、細胞の運動能を抑制することが明らかとなり、CDCP1依存的な機能に、CUB2ドメイン蛋白質が関与していることも明らかとなり、CUB2ドメイン機能の阻害が癌治療のシーズとなり得ることが示唆された。 (2)足場非存性に関与するCDCP1下流シグナル分子の網羅的解析 CDCP1のC末端にFALG標識を付加したベクターを用いての免疫沈降は、様々な条件で検討をおこなったが、昨年のPKCdeltaに加えて、以前報告してきたMT1-MMP及びSrc型キナーゼしか確認できなかった。細胞膜上のCDCP1にはPKCdeltaのみが結合する可能性も考えられたため、今後はCDCP1に結合するPKCdeltaに結合する因子が何かを検討することも考え、準備を進めている。 (3)CDCP1-PKCdeltaシグナル遮断物質の同定 CDCP1-PKCdelta結合の検証システムを確立し、シグナル遮断する低分子化合物の同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)CDCP1機能ドメインの解析として細胞外ドメインの重要性を昨年示し、今年度でその細胞外ドメインに存在する3つのCUBドメインの内、N末端から数えて2番目のCUB2ドメインがCDCP1同士の結合に重要である事をファーウエスタンによって決定する事が出来た。さらに、CUB2ドメインがCDCP1依存的な機能である足場非依存性やがん浸潤能に関与する可能性を示唆する結果も得られている。 (2)結合タンパク質は、これまでに報告のあるSrc型キナーゼ、PKCdelta及び、MT1-MMP以外の蛋白質は検出されていない。そこで、細胞内結合蛋白質に関しては、CDCP1下流のPKCdeltaに結合するタンパク質の検討に変更も考えている。細胞外及び細胞膜を介したCDCP1結合蛋白質に関しては、細胞を溶解する界面活性剤等の条件を色々と試行し再度検討を行なう予定でいる。 (3)足場非依存性シグナルに重要なCDCP1とPKCdeltaの結合を遮断する低分子化合物の同定に成功し、胃癌細胞のマウスへの移植における腹膜播種を抑制することに成功した。 以上の結果から、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)CDCP1の細胞外ドメインのCUB2ドメインがCDCP1同士の結合を介して何量体を形成するのかを検証する。さらに、大腸菌により発現させたヒトCDCP1のCUB2ドメイン蛋白質をヒトがん細胞に添加して、細胞におけるCUB2の局在を観察し、足場非依存性、細胞運動能、細胞死といったCDCP1機能にどのような影響が出るのかを検証する。 (2)CDCP1結合蛋白質に関しては、CDCP1に結合したPKCdeltaに結合する蛋白質の同定を加えて、再度検討を進めることとする。 (3)CDCP1-PKCdeltaシグナルの遮断する事がスキルス胃癌の転移の抑制に効果があるかをスキルス胃癌のマウスモデルを用いて遮断の有無による腹膜播種や生存率を調べることにより明らかにし、足場非依存性を標的とした癌治療法のシーズを確立することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿が次年度になったこと。 蛋白質強制発現系等の実験をおこなう予定が大腸菌による蛋白質の発現に時間がかかり、次年度になりそれに伴った試薬等の購入を次年度にしたこと。
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次年度使用額の使用計画 |
CDCP1及びPKCdelta結合蛋白質の同定に使用する。 ヒト蛋白質発現プラスミドの購入と細胞培養、Soft agar assay用の試薬等に使用する 論文の校正、投稿料等に使用する。
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