癌転移機構の重要な要因の一つである足場非依存性に関与するCDCP1細胞外ドメインにおいて、3つあるCUBドメインの内のCUB2ドメインがCDCO1の2および3量体以上の同種複合体に重要である事を明らかにした。さらに、CUB2ドメイン蛋白質のみの添加は、癌細胞膜上のCDCP1の同種複合体を介したSrc family kinase (SFK)の活性を抑制して足場非依存性及び細胞運動能を抑制することを明らかにした。現在は、CUB2ドメインを含むCDCP1細胞外ドメインに結合する抗体を作成し、抗体療法の基盤研究を推進している。 一方、SFK-CDCP1-PKCδを介したシグナルを遮断するために、CDCP1細胞内ドメインとPKCδ間の結合を検出するスクリーニング系を確立し、低分子化合物による結合阻害実験をおこなったところ、候補となる低分子化合物を2つ同定することに成功した。これらの低分子化合物が、胃癌細胞株の増殖と腹膜播種をin vivoで抑制することをマウス皮下注射および腹腔内注入時の薬剤添加実験で明らかにし、癌転移を標的とした新規の低分子化合物による治療法開発の基盤も確立することが出来た。 面白いことに、小細胞肺癌細胞株においては、足場非依存性に関与するCDCP1の遺伝子座が欠失しながら足場非依存性を保持しているを発見した。よって、癌種によっては新規の足場非依存性制御因子が存在する可能性があり、癌転移治療開発における新たな標的因子同定が期待できる。
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