研究課題/領域番号 |
15K06851
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 信 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20431570)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 遺伝子発現プロファイル / TP53 / 予後予測 / 治療効果予測 |
研究実績の概要 |
我々が開発したTP53 signature は予後および術前化学療法の治療効果の予測性が非常に高く、臨床的有用性が高い。本研究はこれまでの研究の出口戦略として、TP53 signature の臨床応用を目指し、簡便な診断キットの開発を行うものである。また、その診断キットを利用したデータ検証のための後ろ向き観察研究を行うものである。 28年度は「早期乳がんを対象としたnCounter によるTP53 signature の診断精度の検討」として、東北大学病院コホートから得られたTP53 signatureデータよりTP53ステータスを診断するカットオフ値(0.78)を設定した。28年度末までに星総合病院コホートおよび宮城県立がんセンターコホート175例のTP53 sigantureデータを取得した。同症例にカットオフ値0.78を用いて、TP53ステータスを診断したところ、変異型93例、野生型110例であった。変異型群と野生型群を比較するとER、PgR、HER2、組織学的悪性度、腫瘍径および臨床病期において有意差を認め、これらは既報と矛盾のない結果であった。またStage I-IIの症例171例について野生型と変異型群の無再発生存期間を比較したところ、変異型で有意に予後不良であった(P=0.01;Log-rank検定)。 「術前化学療法症例を対象としたTP53 signature と効果予測性の検証」として、東北大学病院乳腺外科との共同研究として、術前化学療法を実施したトリプルネガティブ乳がんを対象とした後ろ向き観察研究(「トリプルネガティブ乳癌の間質における腫瘍免疫・血管新生因子が薬物治療感受性に及ぼす影響の研究」の付随研究)の倫理委員会の承認を得、研究を開始した。平成28年度末までにトリプルネガティブ乳がん症例43例の検体を入手し、RNAの抽出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は「A.早期乳がんを対象としたnCounter によるTP53 signature の診断精度の検討」および「B.術前化学療法症例を対象としたTP53 signature と効果予測性の検証」の2つの計画から成り立っている。 A.においては、平成28年度以降の計画として、1)TP53ステータスを診断するカットオフ値を設定する、2)星総合病院および宮城県立がんセンターのコホートについて、TP53 signatureデータの取得、3)TP53ステータスの診断、4)TP53ステータスと臨床病理学的因子の関連性の検討、5)TP53ステータスによる予後の比較、を予定していた。前述の通り、上記の全ての解析を予定通り実施、完遂した。 B.においては、平成28年度以降の計画として、1)研究計画の倫理委員会の承認取得、2)術前化学療法施行検体の収集、3)TP53 signatureデータの取得、4)TP53ステータスの診断、5)TP53ステータスと術前化学療法の治療効果のおよび予後の関連性の検討、を予定していた。H28年度末までに、1)を終了し、2)を開始している。症例は150例を目標に収集する予定であるが、前述の通り、平成28年度末までに43例の検体が入手できた。 以上より、研究は概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、これまでのところ本研究は概ね順調に進展している。研究計画中のA.早期乳がんを対象としたnCounter によるTP53 signature の診断精度の検討」は予定通りに研究を実施し、ほぼ完了するに至った。今後、使用検体として、新鮮凍結組織由来のRNAのデータとFFPE組織由来のRNAのデータを比較することでデータの一致性を検討し、FFPE検体も使用可能か検討を行っていく。 B.術前化学療法症例を対象としたTP53 signature と効果予測性の検証」については、収集予定の150例を目標に検体収集を継続する。検体収集については、東北大学病院乳腺外科に加え、都立駒込病院乳腺外科の協力も得られることとなった。早期に目標検体数の収集完了を目指し、TP53 signatureデータの取得、TP53ステータス診断、治療効果および予後予測性の検証を進めていく。 また、これらのデータを元に、TP53 signatureの開発を進めるため、共同研究企業の選定、研究契約の締結に向けて協議を行っている所であり、研究のさらなる進捗を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
「B.術前化学療法症例を対象としたTP53 signature と効果予測性の検証」において、収集した検体のTP53 signatureデータの取得までに至らなかったため、同解析に用いる消耗品分の購入費用が使用に至らなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は予定通りに検体の収集が進んでおり、平成28年度に予定していた分のTP53 signatureの解析も併せて実施する予定である。このため次年度使用額分も平成29年度の研究費と合わせ使用する見込みである。
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