研究課題/領域番号 |
15K06852
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桜井 遊 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (80451574)
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研究分担者 |
権田 幸祐 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80375435)
大内 憲明 東北大学, 医学系研究科, 教授 (90203710)
石田 孝宣 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00292318)
多田 寛 東北大学, 大学病院, 講師 (50436127)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨転移 / 骨密度 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
乳癌や前立腺癌、肺がんなど多くの癌において骨転移は一般的な遠隔転移部位である。骨痛・神経障害、高カルシウム血症などが引き起こされ、いずれも患者やその家族のQOLが大きく損なわれる。また癌の治療を行う上で、このような骨関連事象を認めることは、治療継続の妨げになることも多く、骨転移の進展を抑え、骨転移に伴う合併症を防ぐことは、きわめて重要である。また近年骨転移部での癌細胞ニッチの形成が注目されており、癌細胞、骨芽細胞、破骨細胞を中心に多くの因子が癌幹細胞の休眠、腫瘍増殖、癌細胞の転移能獲得等に関わっていることが分かってきたが、依然その詳細なメカニズムや有効な治療法については、明らかとなっていない部分が多く、大きな課題となっている。我々は担癌マウスを用いて、自発的な骨転移モデルの作成に成功し、これらのマウスを用いた研究により骨転移の初期に骨髄内で腫瘍細胞が骨梁を破壊していることを骨密度を測定することで明らかにした。骨密度の低下による骨梁破壊を病理画像で確認し、また破骨細胞が集積していることも確認した。これらは、通常のCT検査などの従来のイメージング方法では確認することができなかった状態であり、早期の骨転移メカニズムに重要な意味を持っていると考えている。骨代謝は、骨を吸収する破骨細胞 (osteoclast)と、骨を形成する骨芽細胞(osteoblast)のバランスによって成り立っているが、骨に転移した癌細胞は、上皮小体ホルモン関連蛋白(PTHrP)などを放出することで骨芽細胞を刺激し、骨芽細胞からRANKLを産生させる。PTHrPについては乳癌の有用な腫瘍マーカーになり得ることを我々も報告している(Harada,Ishida,Ohuchi et al.Jpn J Cancer Chemother 2001)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に作成したマウス自発性骨転移モデルを用いて昨年度は骨密度測定を行い、病理学的に早期の骨転移と骨密度低下が一致することを明らかにした。今年度はこれらの特性を生かし早期骨転移のメカニズムを明らかにするため骨微小環境での破骨細胞や骨芽細胞の動態を観測し転移の進行していく過程を研究することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
破骨細胞が腫瘍細胞の近傍に集積することを免疫染色を用いた病理解析で確認し、破骨細胞を抑制するRANKLを投与し経時的に骨密度の変化との相関を確認し、骨転移発生の早期のメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨密度測定費用として見込んでいた部分を自施設での測定で賄えたため外注費用が抑えられた。本年度で予備試験を行い結果がまとまったため、次年度で外注する予定があるが、経費削減のため、実験試料がまとまった時点で外注することで割安になることを見込んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度得られた研究成果を基に、骨転移の微小環境に関与する各種サイトカインの測定を行い、骨密度低下との関連性を明らかにする。 明らかになった研究成果を論文として速やかに作成するため英文添削などを積極的に行っていく。上記のために次年度使用額を使う予定である。
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