研究課題
本研究では、蛍光色素などの標識なしで細胞の性質を分析する技術を開発することを目的とする。生体、細胞、タンパク質などが本来持つ物質としての電気的性質(電気物性)を指標にして、幹細胞としての性質を規定する技術の確立を行う。間葉系幹細胞は生体から採取した後、培養皿上で培養増幅することが可能である。そこで、組織幹細胞に特異的な電気物性を解析結果を踏まえ、本年度では培養後に電気物性も変化するかどうかの解析を行うことにした。間葉系幹細胞をin vitroで培養することで、幹細胞は徐々に分化することが知られており、培養前後の間葉系幹細胞の電気物性を調べることで、幹細胞性と電気物性の関係性を調べることが可能になる。培養前後の解析の結果、培養により電気物性は大きく異なることがわかった。特に、培養することで細胞径(d)の値が大きくなり、その結果細胞膜の比誘電率(Cm)や細胞質の導電率(K)に影響を与えるのではないかと考えられた。しかしながら、細胞径が異なることや培養による接着性が高くなってしまうことから、最適な解析チップの再検討が必要であると考えられた。その他、造血幹細胞や歯髄間葉系間幹細胞、iPS細胞由来の間葉系幹細胞を用いた解析に向け、細胞分離法や誘導技術の確立を行った。ヒト歯髄間葉系間幹細胞の分離及びヒトiPS細胞の間葉系への誘導法について学術論文に報告した。
2: おおむね順調に進展している
培養後の細胞の性質により、解析チップが詰まってしまうなどのトラブルがあったが、細胞濃度を下げたり流速を調整することで対処した。今後は細胞径の大きい解析チップの利用も視野にいれて研究を進めていきたいと考えている。当初予定していた実験について全て遂行し、予想の範囲内の実験結果が得られた。
単一細胞レベルでの幹細胞能力およびがん化能力をモニター可能な技術の開発を行う。組織幹細胞特異的な電気物性と同じく、がん化する細胞特異的な電気物性が存在するかもしれない。そのため、がんのセルラインおよびがん化誘導間葉系幹細胞を用いて解析を行う予定である。背部の皮下にGFP由来マウス間葉系幹細胞、RFP発現間葉系がん化細胞を移植し、腫瘍形成後に腫瘍をコラゲナーゼ等の酵素で処理後、誘電サイトメーターにて単一細胞解析を行う予定である。腫瘍化の条件を設定するために、放射線照射や癌抑制遺伝子の欠損細胞も用いることを考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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