研究課題/領域番号 |
15K06858
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
數野 彩子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00338344)
|
研究分担者 |
上野 隆 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10053373)
藤村 務 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (70245778)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 前立腺がん / レクチン / マルチプレックス / 糖タンパク質 / 糖鎖 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
現在、前立腺がんの診断には組織特異性の高いマーカーとしてPSA値が用いられている。しかしグレーゾーンといわれる検出範囲(4-10 ng/ml)には良性疾患の患者が7割も含まれ、結局、生検に依存せざるをえないため患者の身体的・精神的負担や医療費の増加の要因になっている。申請者はがんに伴う血清中の糖蛋白質の糖鎖構造変化に着目し、レクチンの特異性を利用して悪性/良性腫瘍を明瞭に識別できる方法を近年発見した。そこで生検不要の前立腺がん診断の実現にむけて、本研究では多項目同時測定が可能なマルチプレックスビーズ結合抗体-レクチン検出法を開発し、迅速かつ高精度な実用レベルの診断システムの確立を目的とした。 昨年度の研究において悪性腫瘍患者血清に結合特異性の高いレクチンとして, ACA, MPA, Jacalinを選択した。次に前立腺がんに特異的に増加するキャリア糖蛋白質を同定するため、患者血清からレクチン結合ビーズを用いたアフィニティー精製および質量分析によるiTRAQラベル定量プロテオミクス解析を行い、キャリア糖タンパク質候補としてclusterinおよびapolipoprotein-A IVを同定した。この結果を確認するため血清のウエスタンブロッティングを行ったところ、ターゲットタンパク質の量に健常者、良性患者、悪性腫瘍患者間の差異は認められなかった。一方レクチン結合ビーズを用いたアフィニティー精製後のサンプルをウエスタンブロッティングした場合は健常者に比べ疾患患者で増加する傾向が検出されiTRAQ分析の結果と一致した。これらの成果をもとに多項目同時測定が可能なマルチプレックスビーズ結合抗体-レクチン検出法の開発をめざし、ACA, MPA, Jacalinレクチンとclusterinおよびapolipoprotein-A IVなどをターゲットとして最適な測定条件の検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では多項目同時測定が可能なマルチプレックスビーズ結合抗体-レクチン検出法の確立を目指し、初年度において悪性腫瘍と健常者を識別できるレクチンを選定し、さらに特異的糖鎖構造変化を提示するキャリアとなる糖タンパク質を同定した。質量分析で得られた結果を確認する目的でウエスタンブロッティングを行い一致した結果が得られた。現在ターゲットとなるレクチン‐糖タンパク質の組み合わせをもとに多項目同時測定マルチプレックスビーズ結合抗体-レクチン検出法の条件検討を進めており当初の研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では多項目同時測定が可能なマルチプレックスビーズ結合抗体-レクチン検出法の確立を目指し条件検討を行っている。以前の研究からハプトグロビンの糖鎖構造が前立腺がんで変化することを明らかにしており、多項目同時測定の一つとしてclusterinおよびapolipoprotein-A IVにハプトグロビンを加えた測定法を検討している。一方、キャリア糖タンパク質の前立腺がんとの関連性についても明らかにする必要があると考えており、前立腺がん細胞株を用いた検討を進めている。質量分析等によりターゲットである糖タンパク質の糖鎖構造変化を明らかにする計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度分を繰り越して次年度に数種の前立腺がん細胞株を購入することを計画したため次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後の使用計画は、抗体やマルチプレックスビーズ結合抗体-レクチン検出法の構築に必要な蛍光ビーズなどの試薬類の購入、糖鎖構造解析に必要な電気泳動や質量分析に用いる消耗品、試薬類が中心となる。また、統計解析をスムーズに行うためのソフトおよびハードの整備を予定している。さらに学会発表などの成果の発表に関する経費を予定している。
|