研究実績の概要 |
本研究は、基礎研究により蓄積されたデータベースと方法論を駆使し、大腸がんの新規薬剤レゴラフェニブおよびTAS-102について、効果予測マーカーを開発する新規手法を試みるものである。レゴラフェニブは、血管新生に関連するキナーゼ (VEGFR1-3, TIE2)、腫瘍微小環境に関連する間質のキナーゼ (PDGFRβ, FGFR)、腫瘍形成に関連するキナーゼ (KIT, RET, BRAF)など、複数のプロテインキナーゼ活性を阻害する薬剤であるが、その耐性獲得機序はまだ解明されていない。現時点でレゴラフェニブに関して有用な結果が得られたので報告する。 標準化学療法で不応または不耐となった進行再発結腸・直腸癌患者を対象としてレゴラフェニブの初回治療開始前、初回治療開始後21日目、治療中止判定時に血液を採取し、血管新生因子や関連因子(ケモカイン等)であるサイトカインをELISAで測定した。抗腫瘍効果とサイトカインの解析においては、治療開始前の血清CCL-5低値と腫瘍縮小に相関が認められた。さらに生存解析でも、CCL5 低値において無増悪生存期間、全生存期間が有意に改善を認めた。一方で、治療開始前と治療開始後のサイトカイン値の変化を解析した結果、VEGF-A(血管内皮増殖因子A)が、治療前より治療開始後21日目で減少した群が増加した群よりも無増悪生存期間が統計学的有意に改善した。生存期間においても改善する傾向を認めた。治療開始前CCL-5値と治療開始21日後のVEGF-Aの変化を組み合わせて解析した結果、治療前CCL5低値でかつ治療開始21日後にVEGF-Aが減少した場合にはさらに無増悪生存期間と全生存期間が延長した。血清CCL5とVEGF-Aは単独または併用でレゴラフェニブ療法の治療前あるいは治療開始早期の効果予測マーカーになりうることが示唆された。
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