研究課題
本研究は、基礎研究により蓄積されたデータベースと方法論を駆使し、大腸癌の新規薬剤レゴラフェニブおよび、TAS-102について、効果予測マーカーを開発する新規手法を試みるものである。レゴラフェニブ葉血管新生に関連するキナーゼ(VEGFR1-3、TIE2)、腫瘍微小環境に関連する間質キナーゼ(PDGFRβ、FGFR)、腫瘍形成に関連するキナーゼ(KIT、RET、BRAF)など、複数のプロテインキナーゼ活性を有する薬剤であるが、その耐性獲得機序はまだ解明していない。これまでに得られた知見は、レゴラフェニブ治療開始前のCCL5と治療開始21日後のVEGF-Aの変化が、標準化学療法に不応・不耐となった大腸癌患者の無増悪生存期間、全生存期間に関連する事が示された。更なる研究により、CCL5の遺伝子多型がVEGF-Aの産生能に関与している可能性が見出された。さらにCCL5の遺伝子多型のホモ接合体の頻度に人種差があり、西欧人に比較して、特に日本人では高頻度であることと、日本人での手足症候群の発症が高い事に関連があることを発見した。以上から、血清CCL5とVEGF-Aの産生とは密接な関連があり、レゴラフェニブにおける治療効果と手足症候群の発症の予測マーカーになりうることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
レゴラフェニブの効果予測マーカー、ならびに有害事象(特に手足症候群)の予測マーカーがこれまで確立していなかったが、我々の研究により治療効果、生存期間、そして手足症候群の予測マーカーを発見するに至った。
現在、TAS-102に関して解析を行っており、効果予測マーカーを抽出する予定である。またレゴラフェニブ、TAS-102に対する研究で得られた結果に対してはさらに知見を深めるべく、機序解明のために分子生物学的解析も行う予定である。
患者集積に予想以上の時間を要したことと、有効症例に関しては観察期間が長くなることで、解析時期のカットオフの決定までに時間を要するため。
新規症例に対する追加検査、また蓄積症例に対する検査項目の追加、効果予測マーカーにおける機序解明や確認のための追加研究で使用。また、得られた成果に対して学会発表、論文発表での使用も予定している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Oncotarget
巻: 7 ページ: 34811-34823
10.18632/oncotarget.9187.