研究課題/領域番号 |
15K06863
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所) |
研究代表者 |
岡本 三紀 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), 研究所, 研究員 (20332455)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | がん / 腫瘍マーカー / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
本研究は、新規腫瘍マーカーの探索および臨床応用を目的としている。これまでに、当研究室が確立した微量糖鎖構造解析技術を用いて、がん患者血清を用いた新規の腫瘍マーカー候補の探索を行ってきた。がん患者血清から調整した糖鎖と、健常者の血清から調整した糖鎖のHPLCにおけるパターンを比較することにより、がん患者特異的なピークを分離し、腫瘍マーカー候補とする。これまで腫瘍マーカー候補として見出している糖鎖の一つに、Core2構造を有する硫酸基付加されたO型糖鎖がある。この糖鎖の詳細な構造を明らかにするため、酵素消化、2次元糖鎖マッピング法および質量分析法を組み合わせ、結合様式を含む構造解析を行った。さらに構造決定した糖鎖が腫瘍マーカーとして有用であるか検討するために、多検体で検証する必要がある。そこで収集したがん患者および健常者血清をヒドラジン処理することで糖鎖を切り出し、さらにアミノピリジンで標識(PA化)した。また、ターゲットとする糖鎖構造に安定同位体である重水素(2H)標識したPA付加糖鎖を内部標準として、血清由来の1H 標識PA化糖鎖に一定量添加する。このPA化糖鎖mixtureを、順相および逆相カラムHPLCを用いて分離・精製、その後SRM(selected reaction monitoring)法を用いた3連四重極型質量分析計で相対定量し、この糖鎖構造が腫瘍マーカーとして有用であるか検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実施計画の予定通り進んでいる。これまで腫瘍マーカー候補として同定していた硫酸基付加O型糖鎖の構造は酵素消化、2次元糖鎖マッピング法および質量分析法で決定した。さらにこの糖鎖構造が臨床応用可能か検討するために、多検体を用いたverification studyを行う必要がある。現在までに膵臓癌65名、胃癌146名、大腸癌101名、食道癌74名、健常者194名分の血清からヒドラジン処理により、糖鎖を抽出および蛍光ラベルを行った。この調整した糖鎖サンプルのうち血清10ul分に、内部標準として重水素(2H)標識した糖鎖を10 fmol添加し、順相および逆相HPLCで分離、その後SRM法を用いた質量分析により正確な定量を行い、各サンプルのターゲット糖鎖の測定を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行しているverification studyを継続し、腫瘍マーカーとして臨床応用可能であるか判断する。同時に当初の計画通りNeuAc以外の酸性糖に着目した新規腫瘍マーカー候補の探索をスタートする。方法として、がん患者および健常者の血清から調整した糖鎖サンプルを、N-アセチルノイラミニダーゼと反応させ、DEAEカラムにて酸性糖と中性糖に分離し、酸性糖として溶出された分画を順相および逆相クロマトグラムにかけ、がん患者、健常者間の分離パターンを比較し、がん患者特異的なピークを腫瘍マーカー候補として検索する。その後イオントラップ型質量分析装置による質量分析で糖鎖構造を推定し、腫瘍マーカー候補とする。特に、この探索方法の技術的な確立と、マーカー候補となる糖鎖構造の同定を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
大部分は糖鎖構造解析および血清糖鎖調整における消耗品に使用したが、今年度の研究実施計画は次年度に継続するものであるので、次年度への使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き消耗品に使用する予定である。さらに次年度は新たな腫瘍マーカー探索計画も予定しているので、その試薬および消耗品に使用する。また機器類の劣化も進んでいるので機器修理等にも使用を希望する。
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