研究課題/領域番号 |
15K06865
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
白水 崇 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, 特任研究員 (00582678)
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研究分担者 |
足立 淳 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, プロジェクト研究員 (20437255)
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プロテオミクス / 大腸癌 / 癌転移 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
【研究の目的】 大腸癌治療では肝転移が予後を規定する主要な因子であり、肝転移を制御する上で転移を予測・診断できるバイオマーカーの開発が急務である。転移のメカニズムは複雑で、症例ごとの個人差も大きい。それ故、同一症例の原発巣と転移巣を用いたマーカー探索は極めて有望である。本研究では、マーカー候補分子のスクリーニングを、原発巣と肝転移巣から抽出した膜タンパク質を用いた定量プロテオーム解析により行う。同定した候補分子は、血中エクソソームに対しマーカーとして有効かどうかを評価する。これには多検体でのハイスループットな検証が可能なSRM/MRM法にて行う。また、転移に関する機能解析も同時に行う。これらの成果により、血中から検出可能な転移マーカーと、創薬ターゲットとなり得る新規転移関連因子の発見が期待される。 【平成28年度の成果】 大腸癌臨床組織の原発巣および肝転移巣より抽出した膜タンパク質の定量プロテオーム解析により同定した、大腸癌転移関連タンパク質について、血中細胞外小胞画分に対するSRM法により、マーカー候補の絞り込みを行った。健常者、Stage2の癌患者(転移なし)およびStage4の癌患者(転移あり)由来の血漿サンプルより、超遠心法による細胞外小胞画分の回収を行い、マーカー候補のSRM解析を行った。その結果、健常者/転移あり/転移なしのサンプルグループ間で発現量に差のある新規の大腸癌血中診断マーカー候補タンパク質を複数同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度研究実施計画に記した以下の項目について、進捗状況を以下に示す。 SRM法による検証:臨床組織の原発巣および転移巣より抽出した膜画分タンパク質の定量プロテオーム解析と、患者血漿および大腸癌培養細胞上清より回収した細胞外小胞画分のプロテオーム解析結果を比較し、原発巣/転移巣間で変動のあったタンパク質の中から細胞外小胞画分で同定されたタンパク質を選択し、マーカー候補タンパク質とした。 これらのマーカー候補タンパク質について、SRM法による検証実験を行うため、最適なペプチドとトランジションを選択した。さらに、健常者および患者血漿由来の細胞外小胞画分を調製し、SRM法によるマーカ候補の定量解析を行った。 定量結果について、健常者/転移なし/転移ありのグループ間の比較を行ったところ、複数のマーカー候補がグループ間で有意な発現変動をしていることが確認できた。これらのマーカー候補は、癌の進展、転移との関連が知られていない新規分子であり、新規の血中診断マーカー候補になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について、以下に示す。 血漿中の細胞外小胞画分でのSRM解析により、マーカー候補として絞り込まれたタンパク質について、より詳細な診断マーカーとしての検証を行う。具体的には、より大規模な臨床検体セットでの再解析と、検証されたマーカー候補ペプチドの組み合わせにより、マルチマーカーとしての有効性の評価を行う。 さらに、癌転移に関する機能的な関連を明らかにするため、大腸癌培養細胞を用いたsiRNAによるノックダウンと機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に購入、および使用予定であった物品の納入が間に合わなかった為、年度内での支払いを行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に予定していたSRM解析に使用する物品の購入費に充てる。本実験は29年度中に完了する予定である。
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