研究課題/領域番号 |
15K06866
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小田 司 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (10323643)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 細胞老化 / p53 / HSF1 / MDM2 |
研究実績の概要 |
HSF1の急性欠乏はp53-p21経路依存的に、ヒト線維芽細胞に細胞老化を誘導する。この過程において、p53に対するMDM2のE3 ligase活性が低下して p53安定化が誘導されると考えられるが、その分子機構は明らかでない。今回、HSF1抑制により、MDM2結合蛋白 dehydrogenase/reductase 2 (DHRS2)が誘導され、p53-p21経路の活性化と老化誘導に強く関与することを明らかにした。 DHRH2が恒常的に強く発現しているヒト骨肉腫細胞株U2OSでは内在性のMDM2と DHRS2との結合が検出された。また、shRNAでDHRS2を抑制するとp53蛋白レベルが減少し、p21を含むp53標的遺伝子の発現が低下した。 ヒト不死化線維芽細胞株において、shRNAでDHRS2発現を抑制すると、HSF1急性欠乏によるp53-p21の活性化が抑制された。また、細胞老化に伴うSA-β gal活性や形態変化が部分的に抑制された。さらに、DHRS2に対する抗体を作製して細胞内局在を調べたところ、核内におけるDHRS2 とMDM2 共局在が、HSF1急性欠乏時に増強した。 これらの結果は、DHRS2が核内のMDM2に結合・阻害して、p53-p21経路の活性化と細胞老化を制御している可能性を示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の一つであるp53活性化の制御機構に関わるDHRSを同定し、さらにshRNAを用いて、DHRS2が、p53活性と細胞老化制御に重要な役割を果たすことを明らかにした。特にDHRS2は、様々なストレスにより発現誘導され、また、その発現レベルと乳がんの悪性度との関連が報告されていることから、DHRS2によるp53活性制御の分子機構は興味深い。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの結果に基づき、引続き予定の研究計画を遂行する。shRNAではDHRS2発現を完全に抑制できないので、遺伝子編集の手法をもって機能喪失させ、p53活性制御、細胞老化、発がんとの関連に重点をあてて研究を遂行する。
|