研究課題/領域番号 |
15K06874
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡本 勇 九州大学, 大学病院, 講師 (10411597)
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研究分担者 |
原田 大志 九州大学, 大学病院, 講師 (10380619) [辞退]
中西 洋一 九州大学, 医学研究院, 教授 (20172356)
岩間 映二 九州大学, 医学研究院, 助教 (40567343) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺癌 / EGFR遺伝子 / CD44 / 癌幹細胞 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
背景:CD44バリアントアイソフォーム(CD44v)は、細胞膜上でシスチントランスポーターであるxCTを安定化し、癌細胞内の抗酸化物質グルタチオン(GSH)生成を促進することで、活性酸素(ROS)の蓄積を抑制している。細胞内ROSレベルは抗がん剤への感受性に関与することが知られているが、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌におけるROS制御機構の検討は行われていない。 結果:HEK293細胞に活性変異(exon19欠失)型EGFRを発現させると、細胞内ROSの上昇を認め、このROSの上昇は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤により抑制された。さらに、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌細胞株PC9、H1650では、細胞内ROSレベルが低く、CD44vが高発現であった。PC9、H1650でsiRNA導入によりCD44v発現を抑制すると、細胞内GSH低下、ROS上昇が見られた。これらのことから、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌では、EGFR遺伝子変異による活性化EGFRシグナルに加え、CD44v発現が細胞内ROSレベルの制御に関与していることを示唆する。更に、抗がん剤シスプラチンとGSH合成阻害剤であるBSOを併用すると、CD44v高発現細胞株PC9、H1650ではBSO投与により、シスプラチンの感受性が増強し、抗酸化物質NAC投与により、この増強効果は抑制された。一方、CD44v低発現細胞株11-18では、この増強効果は認めなかった。これらの結果から、CD44v高発現EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌細胞株において、CD44v-GSH調節機構をターゲットとし、がん細胞の細胞内ROSレベルを上昇させることで、抗がん剤効果を増強させる可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CD44v高発現EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌細胞株では、EGFR遺伝子変異によるEGFR活性化シグナル、及びCD44vの2つの経路で細胞内ROSの調整が行われており、CD44v-GSH調節機構を標的とすることで、従来の抗がん剤の効果を増強させるという新たな知見を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
CD44v高発現EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌細胞株を皮下移植したマウスモデルでも、GSH阻害剤による抗がん剤の増強効果が見られるか、検討する予定である。
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