研究課題/領域番号 |
15K06876
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
山口 美樹 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10530454)
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研究分担者 |
佐久間 裕司 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (10364514)
西井 ゆかり 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10619505)
内田 宏昭 東京大学, 医科学研究所, 講師 (20401250)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EGFR阻害薬耐性細胞株 / ADC型抗体薬 / モノクローナル抗体 / DT3C / 抗体スクリーニング |
研究実績の概要 |
近年、モノクローナル抗体に抗癌剤を結合することで直接的に癌細胞殺傷効果を示す抗体薬剤結合体(Antibody drug conjugate: ADC)が注目され開発が進められている。私たちはプロテインGのIgG結合ドメインとジフテリア毒素を含むリコンビナント複合タンパクを作製しDT3Cと名付けた。このDT3Cは抗体と混合するだけでADCと類似な抗体毒素結合体を簡便に形成できるタンパク質である。抗体-DT3C結合体が癌細胞に細胞死を誘導した場合、その抗体はADCに必須の機能である内在化能を有すると判定できる。本研究では、EGFR阻害薬耐性を獲得した肺腺癌細胞(HCC827GR2)に対し内在化能を有する抗体を探索し、EGFR阻害薬耐性細胞を効果的に細胞死に誘導させうる抗体を樹立し、新規ADC型抗体薬の開発を目指すものである。平成27年度はDT3Cを用いた抗体スクリーニングでADC型抗体薬に適したモノクローナル抗体を100個以上得ることを目標とし、187クローンの独立したハイブリドーマ株を樹立できた。さらにADC型抗体薬として不向きな抗原をELISA法で選択し排除した。これらの方法で樹立できたハイブリドーマ細胞株は72クローンであった。樹立されたクローンの中にアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)に対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株が含まれた。ACE2はレニンーアンギオテンシン系の主なエフェクター分子であり、高血圧、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞などに関係する分子である。また、重症急性呼吸器症候群(SARS)関連コロナウイルスの受容体としても知られている。ACE2発現はHCC827GR2で親株であるHCC827よりもはるかに高く、正常肺細胞では低発現であることから、EGFR阻害薬耐性を獲得した肺腺癌の治療標的として有効と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR阻害薬耐性細胞株に対する内在化能に優れ、ADC型抗体薬に適した抗体が現在までに72クローン樹立されている。現在は抗原同定と同定できた抗体の性質ならび機能解析を進めているところである。早期に抗原が決定したモノの中にADC型抗体薬として有望と考えられるACE2に対する抗体が含まれた。現在、機能解析等を行っているところである。この抗体の他にもEGFR,CD276,CD155などの分子が同定されていることから、これらの機能解析を進める事で新規ADC型抗体薬のベースとなるモノクローナル抗体が多数樹立できると考えられる。以上のことからおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り計画を進める。平成27,28年までに樹立できた抗体の中に予想より多くの新規ADC型抗体薬候補抗体が含まれている可能性が高いことから、新たな抗体の樹立はせず、抗原同定と同定された抗体の機能解析ならびに担癌マウスを用いた治療実験、副作用を踏まえた実験および病理学的解析を進め臨床薬としての有用性を吟味する。
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次年度使用額が生じた理由 |
納入に時間を有する試薬(輸入抗体)が含まれていたため、当該年度の納入が出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
輸入抗体は新年度早々に納入されるため、直ちに使用できる。
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