研究実績の概要 |
必須アミノ酸であるロイシンやアルギニンは、mTOR経路活性化、すなわち細胞増殖に重要である。また、アルギニンはNO合成の基質であり、そのNOは良性腫瘍から悪性腫瘍への進展に関与することが示されている。本研究計画では、それら重要なアミノ酸を取り込むトランスポーターに焦点を当て、癌の増殖、進展における機能的役割の検討を行うことを目的とする。アミノ酸トランスポーターとして、すでに抗癌薬の標的として着目されているLAT1に加え、ロイシン/アルギニンを輸送するy+LAT 1, 2に着目した。癌培養細胞として、胎盤絨毛癌細胞のBewo, JEG-3細胞、口腔・歯肉癌細胞のHEp-2, Ca9-22,HSC-3細胞、膀胱癌細胞のT24細胞、前立腺癌細胞のPC-3, DU145細胞、乳癌細胞のMCF7, T47D細胞などを用いた。各種癌細胞の増殖におけるロイシン/アルギニンの影響を検討するため、ロイシンやアルギニンの濃度を低下させて細胞増殖を観察した。その結果、それらアミノ酸の濃度を低下させると、細胞増殖が抑制された。LAT1特異的阻害剤JPH203を用いて、細胞増殖抑制効果を検討した結果、各腫瘍細胞でその感受性が異なっており、T47DやDU145で感受性が高かった。ウエスタンブロットによりLAT1, y+LAT 1, 2のタンパク発現量を比較した。y+LAT2は比較的どの癌培養細胞にも発現が見られたが、LAT1はHEp-2, Ca9-22, JEG-3細胞で発現量が高く、y+LAT1はJEG-3でのみ高い発現が見られた。今後、これらトランスポーターの重要性を検討するとともに、癌組織切片を用いてそれらトランスポーターの発現を観察していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度内には、癌培養細胞におけるy+LAT, CAT familyの発現とモデル細胞の選定と In vitro assay系によるy+LAT, CAT familyの機能的役割の解明を行う予定であった。y+LATファミリーのタンパク質発現解析は行ったが、CATファミリーに関してはmRNAの発現しか行っていない。しかしながら、ターゲットとしたアミノ酸トランスポーター以外のものの重要性も考えられたため、DNAマイクロアレイや質量分析計(MS)を用いた、網羅的なトランスポーター発現解析も進めている。
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