研究実績の概要 |
必須アミノ酸であるロイシンやアルギニンは、mTOR経路活性化、すなわち細胞増殖に重要である。また、アルギニンはNO合成の基質であり、そのNOは良性腫瘍から悪性腫瘍への進展に関与することが示されている。本研究計画では、それら重要なアミノ酸を取り込むトランスポーターに焦点を当て、癌の増殖、進展における機能的役割の検討を行うことを目的とした。 LAT1特異的阻害剤JPH203を用いて細胞増殖抑制効果を検討した結果、各腫瘍細胞でその感受性が異なること、LAT2, y+LAT1, y+LAT2 を過剰発現させてもJPH203の感受性に変化は見られないことを報告した。これまでの結果から、癌の増殖にはLAT1が最も重要であると考えられたため、LAT1の機能調節を行う分子の解析を行った。 Yeast hybrid screeningによって、LAT1と相互作用する分子を急性リンパ芽球性白血病のJurkat細胞ライブラリーを用いてスクリーニングした。その結果、LAT1の機能調節に関わりそうなたんぱく質が多数得られた。そのうち、分子シャペロンとタンパク質分解系の2種類のタンパク質に着目して解析を行った。免疫沈降で結合を確認したのち、それらの阻害剤を用いて影響を検討した。その結果、その阻害剤単独でも殺細胞効果は見られるが、JPHを併用すると相加効果が見られた。また、阻害剤存在下でしばらく培養しLAT1の局在を免疫蛍光染色で観察を行うと、LAT1の細胞表面での発現が減少していた。したがって、この2種類のタンパク質がLAT1の機能発現に重要な役割を果たしていると考えられた。
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