腫瘍組織における微小環境の重要性に着目し、正常組織の血管と腫瘍組織の血管機能が異なることを明らかにしてきた。本結果から、腫瘍組織の血管内皮細胞には正常組織とは異なる抗原蛋白質が発現しているという仮説のもと、腫瘍組織血管内皮細胞をパルスした樹状細胞免疫により抗腫瘍効果が得られることを明らかとしてきた。しかしながら、腫瘍組織の血管のみを標的とした治療において、腫瘍の完治が認められないことから、腫瘍には血管内皮細胞から構成される血管とは異なり、新規な血管新生経路があることが予想される。その新規経路の新生血管が「擬似血管」であるという仮説をたて、擬似血管を標的とした治療法の開発を着想した。 まずがん幹細胞から分化誘導した擬似血管の培養法は確立されていないことから、マトリゲルやスフェロイドを用いたin vitro擬似血管培養法の確立に成功した。 次に、擬似血管を抗原とした免疫ファージ抗体ライブラリの作製および特異抗体の創製を行った。擬似血管抗体の創製にあたっては、ファージディスプレイ法を用いた。免疫ファージ抗体ライブラリから擬似血管に特異的に対する結合親和性を有するクローンの選択を、in vitroおよび組織切片を用い行った。 結果、擬似血管に特異的に結合するファージ抗体数種の選別に成功した。その抗体が認識する抗原の同定を行っているところである。また、様々な組織切片を用い、さらにin vivoにおけるファージ抗体集積性への基礎検討を行い、その特異性について精査中である。
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