研究課題
平成28年度は、初年度に引き続き、蛍光タンパクGFP遺伝子を安定的に導入したヒトがん細胞株と対応する臓器由来のヒト間質細胞との共培養系を用いて活性物質の探索を行った。その結果、肺がんの共培養実験系で、がん細胞および間質細胞のみの培養に比べて共培養した時にがん細胞の増殖を強く阻害する活性を、ある放線菌培養液に見出した。活性物質が微量であったため、現在放線菌を大量培養して構造解析用に足る量を確保するために精製中である。一方、初年度に放線菌培養液から見出した活性物質は、MS、NMR、結晶構造解析の結果から8-azaguanineと同定した。8-azaguanineは肺由来の間質細胞存在下で肺がん細胞の増殖を強く抑制したが、その作用には両細胞の直接的な接着が必要であることが分かった。一方、別の構造類縁体では同様な効果が見られなかったことから、8-azaguanineに特異的な標的分子の存在が示唆された。現在、詳細な作用機構について解析を行っている。先行していた新規化合物intervenolinは胃がんの共培養系で目的の活性を示す活性を有するが、これまでの解析から胃の間質細胞に作用することで胃がん細胞の増殖を抑制する因子の分泌を促進することが示唆されていた。その後の解析から、間質細胞から分泌される因子の一つとしてthrombospondin-1を同定し、実際にリコンビナントタンパクthrombospondin-1によって胃がん細胞の増殖が抑制されることがわかった。このように、胃がん-間質相互作用にthrombospondin-1が関わっていることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度に引き続き、本年度も新たに活性物質を発見できた点は極めて順調である。また、昨年度発見した化合物を8-azaguainineと同定し、その作用機構の解析に進めた点もよく、またこれまでに我々が見出した活性物質とはことなるメカニズムが示唆された点も重要であり、今後の解析が期待される。さらに、先行している化合物intervenolinの作用機構については、間質細胞から分泌が促進される因子の一つとしてthrombospondin-1を同定でき、実際にがん細胞の増殖抑制活性を確認できた点も極めて進展が得られた点である。
引き続き新しい活性物質の探索を続け、がん-間質相互作用を調節する活性物質を一つでも多く発見する。現在構造解析のために放線菌の大量培養を行っている活性物質については、構造を決定する。また、発見した化合物の作用機構の解析を進めると供に、大量にサンプルを調整し、動物実験での安全性評価および実際の抗がん活性について検討する。8-azaguanineについては、詳細な作用機構の解析をさらに進めるとともに、動物実験での抗がん活性についてもがん-間質相互作用の観点から解析を試みる。
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