研究課題
【背景】第3世代のEGFR阻害薬(EGFR-TKI)オシメルチニブは、EGFR T790M変異に起因する第1世代EGFR-TKI治療への耐性を示す非小細胞肺癌症例に有効であるだけでなく、EGFR活性化変異を有する未治療の非小細胞肺癌症例に有効な第一選択薬として期待されている。しかし、オシメルチニブ抵抗性を示す症例がすでに報告され、EGFR C797S変異およびMET遺伝子増幅などが耐性機序として挙げられているものの、未だ全貌は明らかになっていない。本研究は、オシメルチニブ耐性に関連する代謝特性を同定し、その特性を標的とした治療法を開発することを目的とした。【方法】EGFR活性化変異を有するHCC827細胞株をエルロチニブに長期曝露することにより得られたエルロチニブ耐性細胞株から、オシメルチニブ耐性も示す細胞株(EOSR)を選択し本研究に用いた。【結果】EOSR細胞株において、EGFR T790MおよびC797S変異は認められなかったが、METの遺伝子増幅が検出され、MET阻害剤クリゾチニブとオシメルチニブの併用により、オシメルチニブ感受性の回復が認められた。メタボローム解析の結果、EOSR細胞株は乳酸をはじめとする解糖系の代謝物の細胞内濃度が親株HCC827に比べて有意に高いだけでなく、解糖系の律速段階であるヘキソキナーゼ遺伝子の発現亢進が認められ、解糖系の活性化が示唆された。解糖系阻害剤である2-デオキシ-D-グルコース(2-DG)とオシメルチニブの併用をEOSR細胞株で検討した結果、オシメルチニブに対する感受性の回復が認められた。【結論】オシメルチニブ耐性機序として、解糖系の亢進を伴うMET遺伝子増幅を有する症例においては、2-DGの併用はオシメルチニブ耐性を克服するための一つの治療戦略になる可能性がある。
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