研究課題
家族性の精神遅滞の脆弱X症候群(FXS)は、責任遺伝子FMR1遺伝子の5’非翻訳領域に存在するCGGリピートが母性伝播に際して不安定化して伸長し、FMR1プロモーターとCGGリピート領域の高度メチル化とFMR1の発現抑制という一連のクロマチンの変化が起きて発症する。本研究では、このFXSの根本的病因であるCGGリピートのクロマチン動態を解明するために、ゲノム編集と染色体操作技術を活用した下記の2つのアプローチによって、CGGリピートに結合して、FMR1遺伝子発現とCGGリピートの動態制御、ひいてはFXSの発症に関わる因子の同定を試みる。1)FMR1遺伝子の発現は、CGGリピート長と逆相関する形で、正常に比べて保因者(不安定化の前段階)で高く、発症すると抑制される。本研究では、FMR1遺伝子のプロモーター直下に蛍光レポーターを導入し、FMR1遺伝子の発現動態を蛍光でモニターできる系を構築する。2)人工染色体を用いた、任意のゲノム領域に結合する因子を網羅的に回収し、同定する染色体免疫沈降法(以下、ChrIP)という独自のオミクスアプローチに用いるCRISPR/dCas9系をもちいたタグシステムの構築とChrIP法の適用。H29年度はアプローチ2)のChrIP法のためタグエピトープ及び蛍光タンパク質を融合したCas9(タグ-dCas9-蛍光タンパク質)タンパク質を免疫沈降のタグとして利用するための条件検討を進めた。タグ-dCas9-蛍光タンパク質を集積させる領域として、人工染色体のヒト21番セントロメア配列もしくは、ヒトX染色体上にあるFMR1遺伝子座のCGGリピートを選定し、これらの配列に対するgRNAと組み合わせて一過性に発現させた。しかし、タグ-dCas9-蛍光タンパク質のシグナルは細胞全体に広がるようなものであり、核内でのスポット様の蛍光シグナルは観察されなかった。
すべて 2017
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