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2015 年度 実施状況報告書

野生植物集団におけるゲノムの時空間変異:ゲノム生物学と野外生物学の統合

研究課題

研究課題/領域番号 15K06901
研究機関日本大学

研究代表者

森長 真一  日本大学, 生物資源科学部, 助教 (80568262)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードゲノム / シロイヌナズナ近縁種 / 適応遺伝子
研究実績の概要

アブラナ科シロイヌナズナ属植物ハクサンハタザオを対象に、野生植物集団におけるゲノム変異の網羅的な探索をおこない、野外環境に対する適応機構を解析することを試みた。
全国約80地点から1個体ずつを収集し、次世代シーケンサーillumina Hiseq2000で全ゲノム解析をおこなった。得られた配列を構築済みのリファレンスゲノムにマッピングしたところ、各個体あたり17~32万箇所の一塩基多型(SNP)を検出した。これらのSNPの中から集団間で共通する約10万SNPをもとに、ハクサンハタザオの日本全域スケールでの集団構造解析をおこなった。
各個体の地理的分布を考慮に入れたクラスタリング解析を行ったところ、中部地方と東北地方を境に南北2つの分集団に分けられることが明らかになった。また、同様の遺伝的分化パターンはPCA解析、STRUCTURE解析、近隣結合法による系統解析でもおおよそ支持され、他の日本産高山植物と同様に、氷期における分布拡大と間氷期における高地への退避によって集団分化が生じたと考えられる。ハクサンハタザオは標高2000mを超える山岳地帯にも分布する一方で、低標高域にも広く分布していることから、氷期-間氷期サイクル以降も環境適応によって分布域を広げたことも示唆される。さらに、南北の分集団間では気温を中心として生育環境が大幅に異なること、2つの分集団の交雑地帯が境界域に限定されることから、適応的形質も南北の分集団間で分化していることが予想される。今後は各地点の環境要因と対立遺伝子の在不在データを利用して、環境適応を担う遺伝子の探索をおこない、環境適応のゲノム基盤の解明を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定よりも解析個体数を増やし、全国約80地点に由来するハクサンハタザオの全ゲノム解析を実施した。その結果、ハクサンハタザオの日本全域スケールでの集団構造解析をおこなうことに成功した。ゲノムワイドな集団構造解析により、従来型の遺伝マーカーを用いた解析に比べて、精度の高い結果を得ることができた。この結果を使うことにより、次年度以降の適応遺伝子の探索も容易になることが予想される。

今後の研究の推進方策

得られた80個体分のゲノムデータに基づき、これまで以上に詳細な集団遺伝学的な解析をおこなう。特に、集団構造に関係する解析については、モデルを用いて集団の履歴を明らかにする。加えて、生育地の様々な環境情報と遺伝子型の相関関係を解析することで、環境との関連が予想される適応遺伝子の探索をおこなう。

次年度使用額が生じた理由

解析精度を向上させるべく、当初の計画以上にゲノム解析個体数を増やしたため、データ解析を完了することができなかった。そのデータ解析に使用するはずであったコンピューター関連消耗品や成果発表のための旅費において次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

データ解析に必要なメモリ・外付けハードディスク・ソフトフェアなどの消耗品費、また成果発表のための旅費に使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] From the laboratory to the field: assaying histone methylation at FLOWERING LOCUS C in naturally growing Arabidopsis halleri.2016

    • 著者名/発表者名
      Nishio, H., Buzas, D. M., Nagano, A. J., Suzuki, Y., Sugano, S., Ito, M., Morinaga, S.-I., Kudoh, H.
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 91 ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A genome scan for genes underlying microgeographic-scale local adaptation in a wild Arabidopsis species2015

    • 著者名/発表者名
      Kubota, S., Iwasaki, T., Hanada, K., Nagano, A. J., Toyoda, A., Fujiyama, A., Sugano, S., Suzuki, Y., Hikosaka, K., Ito, M., and Morinaga, S.-I.
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 11 ページ: e1005361

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1005361

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ゲノム情報を利用した野生植物の適応力多様性評価2016

    • 著者名/発表者名
      久保田渉誠・岩崎貴也・三浦憲人・永野惇・花田耕介・松葉史紗子・宮下直・彦坂幸毅・伊藤元己・森長真一
    • 学会等名
      第63回日本生態学会大会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2016-03-24
  • [学会発表] UV-B-induced damage on DNA and growth in highland and lowland ecotypes of Arabidopsis species2015

    • 著者名/発表者名
      Qing-Wei Wang・尾崎洋史・永野聡一郎・森長真一・日出間純・彦坂幸毅
    • 学会等名
      植物学会第79回大会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ新潟(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2015-09-07
  • [学会発表] 大根野生種ハマダイコンにおけるトランスクリプトーム解析2015

    • 著者名/発表者名
      田島直幸・石塚航・花田耕介・清水みなみ・鈴木穣・伊藤元己・彦坂幸毅・森長真一
    • 学会等名
      植物学会第79回大会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ新潟(新潟県新潟市)
    • 年月日
      2015-09-07

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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