研究課題
中年女性に好発し、肝不全に至ると肝移植以外には救命方法が無い難病として知られる原発性胆汁性肝硬変(PBC)の発症メカニズムや病態の進展に関与する遺伝要因を探索し、病態メカニズムの解明や治療や早期診断等に使用できる因子を探索することを目的としたゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施している。H27年度は、2012年に報告した487名のPBC患者および476名の対照者を用いたGWASに、更に894名のPBC患者および1029名の対照者を加えたGWASを実施し、512名のPBC患者および6512名の対照者を用いたReplication Studyを実施し、新規のPBC関連遺伝子を1つ見つけることに成功し、現在論文投稿中である。また、PBC患者計1893名を対象とした層別化解析(PBC患者において観察される自己抗体[抗gp210抗体陽性vs陰性、など]や重症度[Stage 1-3]により比較)を実施した。各要因による解析において様々な候補遺伝子・変異が検出されたが、遺伝学的ないくつかの指標から、それぞれの候補遺伝子を順位付けし、順位の高いものからその後の機能解析を順次進めている所である。現在、PBCの重症度と関与する遺伝要因の細胞内での発現量の違い等を検討しており、GWAS論文がAcceptされ次第投稿予定である。海外(イタリア、カナダ)との共同研究は、まずはX染色体の解析から進めた。同じ方法でQC、補正、関連解析を実施した。また、Imputationも同じ方法で実施済み。海外との比較をH28年度実施予定である。パスウェイ解析については2013年に報告されたLinear Combination Testを、遺伝子内のTOP HIT、連鎖不平衡の状態、統計解析手法の選択、どの程度の有意差まで重み付けに加えるか等、条件を振って実施したが、新規パスウェイの明らかな関与は検出されなかった。
1: 当初の計画以上に進展している
研究実績の概要への記載の通り、平成27年度に実施予定の層別化解析、海外との共同研究、およびパスウェイ解析は予定通り実施した。また、平成28年度に実施する計画だった、層別化解析から検出された抗gp210 抗体関連候補多型周辺領域の連鎖不平衡状態の確認、TagSNPsの決定、ImputationによるGWASが既に終了している。
平成28年度分として当初から計画している予定に加え、パスウェイ解析については、Linear Combination Testの条件をもう少し振ってみるのと、2015年にPBCのイタリアとカナダのCombined analysisとして報告された、GCTAソフトウェアを使用したconditional解析を日本人でも実施し、有望なパスウェイが検出されるか試す予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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