研究課題/領域番号 |
15K06918
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
菅谷 茂 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90334177)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エピゲノム / 外来DNA / DNAメチル化 / エピソーム / 原子間力顕微鏡 / DNA結合タンパク |
研究実績の概要 |
ウィルス感染などにより誘導されるエピゲノム異常と疾患の関わりが示唆されており、分子機構の解明が希求されている。ホスト細胞は外来ウィルスDNA に対し、フリーDNA 状態からヌクレオソームを形成し、DNA メチル化やヒストン修飾を行うなどダイナミックにエピゲノムを制御するが、時系列的に変遷するエピゲノム状態については不明な点が多い。 GFP遺伝子を持つEpstein-Barrウィルス型エピソーマルプラスミドDNAを293T細胞に導入すると、薬剤非選択条件下において、発現抑制が見られた。経時的にシトシンのメチル化(以下、DNAメチル化)誘導の有無を調べたところ、導入後10日後の細胞集団では、GFPの発現抑制はみられたが、DNAのメチル化誘導はみられなかった。一方、導入後50日後の細胞ではDNAメチル化誘導が観察された。よって、培養後10日後にみられたGFPの発現抑制はDNAメチル化以外の機構によることが分かった。 次に、GFPの発現抑制に関わる因子の同定を目指し、ビオチンラベル処理をおこなったエピソーマル型プラスミドDNAを293T細胞に導入し、プラスミドDNAに結合するタンパクの検索を行った。複数の候補タンパクを同定し、現在、エピゲノム制御との関連を調査している。 また、原子間力顕微鏡(AFM)を用い、メチル化DNAに特異的に結合するMBD蛋白によるDNAメチル化状態の可視化を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エピソーマル型プラスミドDNA(oriP配列、EBNA1遺伝子およびGFP遺伝子を含む、以下EBM)をホスト細胞にトランスフェクションして、そのDNAメチル化状態の変遷をバイサルファイトシークエンス法およびパイロシークエンス法によって解析した。 既報において、ES細胞では、1週間の短期培養後にプラスミドDNAのメチル化誘導は見られるが、293T細胞では見られないとされていた。我々もEBM導入後10日前後の細胞集団では、DNAのメチル化誘導はみられなかった。しかしながら、導入後50日後の細胞ではDNAメチル化誘導が観察された。 さらに、別のエピソーマル型プラスミドDNA(oriP配列、EBNA1遺伝子およびlacOリピート配列を含む、以下EBV-lacO)を用い、バイサルファイトシークエンス法にてOri15A領域の解析を行ったところ、長期培養によりメチル化誘導が見られた。EBV-lacO を細胞へ導入後、GFP-lacRおよびmCherry-MBDを共発現させたところ、48時間後の細胞では共局在は見られなかったが、長期培養後に共局在が観察され、細胞内でのメチル化状態の可視化に成功した。 また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いたDNAメチル化の可視化の試みとして、メチル化DNAにメチル化DNAに結合するMBD蛋白を加えたところ、DNA蛋白複合体が観察された。
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今後の研究の推進方策 |
ビオチンラベル処理をおこなったエピソーマル型プラスミドDNAを293T細胞に導入し、プラスミドDNAに結合するタンパクの検索を行った。複数の候補タンパクを同定しており、現在、これらタンパクの発現抑制系の構築を目指しており、エピゲノム制御との関連を調査している。 また、MBD蛋白を用い、メチル化DNA とのDNA蛋白複合体像の観察が原子間力顕微鏡(AFM)により可能となったため、今後は細胞に導入したプラスミドDNAを経時的に細胞から抽出し、どのようにメチル化が誘導されるか、観察する。
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